「未完成でも素早く出す」 を実現しながらよりよいものをつくる

この記事は『つくるためにかんがえていること』のマガジンの文章です。

デザインの世界にも「未完成でも素早く出す」という仕事の価値観がある。

けれどそれに反してディテールがないと威力が出ないので、全体感に対しての評価や判断は結局は出来ないというところがある。

例えばこのことに頓着せずに「未完成でも素早く出す」を実行してしまうと、以下のようなことが起こったりする。

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クライアント「未完成でもいいので随時途中で共有してもらいながら進めたいです。」
デザイナー「分かりました。一旦ラフですが共有します。」
クライアント「ちょっとどれも微妙だねぇ…。」
デザイナー「そうですか...。新しい方針でもつくってみます(この案、完成形だったら納得してもらえるような気もするんだけどなぁ…)。」

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書いてて胸がぎゅっとなってしまいましたが、一度目を閉じて深呼吸をしてから、書き進めることにします。

「未完成でも素早く出す」の「未完成」という部分を、言葉そのままの意味で進めるとこのようなことが起こってしまう。

ではどうすればいいのかというと、「未完成で出す」わけではなく「試作品をたくさんつくる」というやり方で捉えてみると、うまくいくことが多いなと思う。

特にぼくの場合は全てのディテールにおいて詰まっているものを一気につくるということが苦手なので、このやり方の方が性に合ってると感じる。

だから「未完成」を出すのではなく、「検証するための要素のみ作り込み、それ以外の要素を排除した状態」を連続的に出していくという作り方をしている。

そして、スタディやプロトタイプの勘所は「検証したいことを1つに絞る」ことだと思う。1つのプロトタイプに、1つの検証内容。

そうすると、スタディやプロトタイプが伝えてくれるメッセージがびびっと立ってくる。

クライアントやチームメンバーとの打ち合わせでも、明らかにしたいポイントを絞って議論をすることができる。感想をもらうのではなく、向き合っている問いへの答えを一緒に出す。

これが「未完成でも素早く出す」という、クオリティを高めることとしばしば矛盾する力が働いてしまいがちな進め方との向き合い方。完璧主義的な性質に邪魔されがちな自分にはぴったりだなぁって感じる。

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