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短編 『ミカミという男』 初稿


この文章はnoteメンバーシップ「とつゆうの書くこと、つくること」の記事です。書くことやつくること、生活に纏わるエッセイや、未公開の小説の原稿、これからやりたいことの企画書などを投稿しています。月に2本ほど投稿予定です。とつゆうの作家活動・執筆活動がとても支援されますので、何卒よろしくお願い致します。


 新しい物語を書いていて、その初稿ができたのでメンバーシップに先んじて公開します。

 初稿なので荒削りですが、どんな感じで物語を書いているのかを体感してもらうのも面白いかなと思ったので、このままどん!と投稿します。


***

▽ 人物

・僕 … 物語の主人公。第一稿では一人称視点としているが、僕にも名前をつけて三人称視点に寄せていきたい。

・ミカミ … ドレッドヘアで、半裸でいつも過ごしている。肌は濃い黒に近いような茶色で、大きなブレスレットやバングレット、ピアスなども含めて、全体として見るとどこかの未開地の部族であるかのような格好をしている。

・ジン … ミカミと二人でいるときに、浅い曇がかった緑色の体をしたエリマキトカゲを通して僕に話しかけてきた存在。そのエリマキトカゲは「ヌシ」と呼ばれていた。本体(人間の姿)は、小柄で色白、純朴そうな青年。

▽ 展開

<1>

 ミカミを最初に見たそのときに、僕は彼から何か重要なことを学べるかもしれないと直感的に感じた。

 僕から見たミカミは、その見た目の奇妙さ以上に、その心の中に何か特別な感覚があるように思えた。

 誰にとってももし、大切な一部の人間以外に対しては閉ざしているような、そんな心の奥の方にある門のような場所があるとしたら、彼の門はいつも全てが開け放たれ、その精神は解放されているように見えたのだ。

 それがミカミから、僕の個人的な内面において重要な何かを学びとることができると直感した理由だったのかもしれない。

 僕はその日、ミカミの家に忘れ物をしたことに気付いてすぐに帰り道を折返した。

 ミカミの家は山の中にポツンとロッジか山小屋のように一軒建っているだけで、あたりには特に何もなかった。

 その家の前に広がる敷地で彼は、熊を飼っていた。いや、単にその山に住む熊が、彼の家の前をよくウロウロしていると表現した方が適切かもしれない。だが僕が見たところミカミとその熊は相棒のような関係になっているようだった。

 忘れ物を取りに行った際、ミカミに声をかけられた。

 「行くところがある。一緒に行こう。」

 憧れのような感情を抱かれていることをミカミは察し、もう少しコイツと話をしてやろうと思ったのかもしれない。または、僕のような社会的な事情やら合理性やらに囚われている人間を見て、哀れだと思ったのかもしれない。

 だがどちらにせよ僕は嬉しくなって、目的地がどこであれ、ミカミについていくことにした。

 だが道中、ミカミから何か大切なことを話してくれるというわけではなく、会話は僕から彼に対して質問をするばかりだった。

 ミカミとの話の中で最も印象に残ったのは。動物との心の通わせ方だった。

 僕が「どうしてもまだ、動物と一心同体にはなれていないように思う。ミカミの家にいったときにも、僕は熊を恐れていた。」と話すと、ミカミが言った。

 「一心同体になろうとするのではなくて、ソイツに『いる』と思われる方がいい。」

 僕にはそれがどういう意味なのか、そのときにはあまり分からなかった。

 僕が「熊に襲われて噛まれたりするようなことはないんですか」ときくと、彼は左腕に丸くポツポツとついた傷を僕に見せた。

 「どんな信頼関係を結んだ相手にだって噛まれることはある。むしろ信頼関係があるからこそ噛んでくることがあるんだ。」とミカミは言った。

 20分ほど歩いただろうか。いつの間にか山のふもとまでたどり着いていて、山の入口となっている場所には小さな鳥居と一軒家があり、建物には「門脇商店」と書かれたボロボロの札が立っていた。

 その建物の脇の塀に、小柄で色白な青年が座っていて、こちらに手を振った。ミカミは手を上げず、目で合図をした。

 少しもっこりとしてボリュームがある、アフロとおかっぱヘアの間のような髪型をした青年だった。目は黒くてくりくりとしている。

 彼は、穏やかでゆっくりと喋る、優しく心に直接語りかけてくるようなニュートラルな話し方をしていた。水色のTシャツを着ていて、どこかアニメのキャラクターのように現実離れしているような印象を与える。

 その青年が僕の方を見て、「やあ」と言った。

 僕は「どうも、初めまして…」と言うと少年は不思議な顔をして「あれ、ヌシだよ?わからない?」と、どこか少年のような純粋さを感じさせる笑顔で僕に言った。

 僕は一瞬考えて、その声が、ミカミと出会ったときに家のそばで話かけてきた「ヌシ」と呼ばれるエリマキトカゲと同じ声があることに気が付いて、驚いた。

 色白の青年は自分のことを「ジン」と名乗り、動物を介して会話をすることができるんだと話した。その能力によって、僕はエリマキトカゲを介して彼と話していたことを知った。

 僕は疑問を抱く。ジンは、エリマキトカゲ以外の動物でも同じことができるのだろうか?そして、眼の前にいる人間の姿である本体の青年は「ジン」と名乗っている。ということは「ヌシ」という名前は、あのエリマキトカゲのことを指しているのだろうか?

 様々なことに関して不明瞭で分からないことだらけであったが、今は質問を繰り返して事実を一つずつつまびらかにしていくような行為は重要なことではないように思えた。

 きっと知るべきことは二人が説明をしてくれるはずだし、今は分からないことだらけであっても、必要なことは少しずつ理解していくことができるだろう。

<2>

 その日のうちに僕は、ミカミとジンとチームを組むことになった。何だかヘンテコで、バランスの悪いチームだ。バランスが悪い理由は、明らかに僕の存在が原因となっている。

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