毎朝 「淑気」 を手に入れる。

この記事は、つくるためにつづけていることや、つくるときに考えていることなどを書いているマガジン『つくるためにつづけていること』の文章です。つくったもの以外を世の中に公表するというのは、ちょっと恥ずかしくて気後れしちゃうので。。

ぼくは朝、目が覚めてからキリっとした顔になるまでにすごく時間がかかる。

これが本当にやっかいで、ほっとくと朝起きて30分〜1時間くらいは何も考えずにボーッと佇んでしまう。

そんなときにはコーヒーを淹れると、びっくりするほどに冴え渡り、ばっちりと覚醒できる。

*

まどろんだまま瓶キャニスターから、コーヒー豆を12gすくい出す。

ポーレックスの手挽きグラインダーでゴリゴリと細胞壁を壊し、細かい粒子にしていく。

三角錐の形のドリッパーに同じ形の紙を載せ、挽いたコーヒーをとんとんと入れていく。

沸かしておいたお湯を少しずつ注いでいく。全体にまんべんなくお湯を30gほど回し入れたら、コーヒーが開いていく30秒をぼーっと眺めながら待つ。

できるだけ細くゆっくりと、かさが増えすぎないように回しながら1,2分ほどかけて230gになるまで注いでいく。

カラフェの中で液体をくるくると回して、完成。

温めておいた器に注ぐ。「今日はこれがいいな」と選んだお気に入りの器だ。

すぐに飲みたくなる欲望を堪えて縁側に持っていく。

一口飲む。

液体が喉から流れ込んでくる。

徐々にカフェインが体に染みていくのを感じる。

体がハキハキと目覚めていく。

*

「淑気(しゅくき)」という言葉がある。

新しい年を迎えたときの、凛として澄んだような気持ちという意味の言葉。新年の季語でもあります。

この言葉を知ったときに、コーヒーを淹れる儀式と、それを体内に流し込むことで、毎朝命を新たにしたような「淑気」を手に入れたいんだなと思いました。

そんな、生活の儀式みたいなものを育てていきたい。

今朝もコーヒーを淹れたことにより、何とかあの恐ろしくも魅惑的な秋のまどろみから抜け出すことができたのでした。

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