面倒な言葉と自分以上のものを背負わない覚悟

今朝の記事
著作は読んでいないのだが、この記者さんの文章が目を引いた。

抜粋引用

読売新聞2020一年9月1日文化欄 「記者ノート」右田和孝記者

芥川賞直木賞165回贈呈式。芥川賞作家 李琴峰氏の話から。

李さんは母語ではない日本語で受賞作「彼岸花が咲く島」を執筆した。だが芥川賞に決まった後、「おおよそ私の書いたものを読んだ事はないと思われる人たち」から、「外国人は日本の悪口を言うな」などと、ネット上で多くの中傷があったことを明かした。
それらに対し、「本来は極めて複雑な思考を持つ人間を、極めて単純な属性と条件反射的な論理によって解釈しようとしている」と批判。「そのような暴力的で押し付けがましい解釈はまさしくこれまで、私の文学を通して一貫して抵抗してきたもの」と語った。

李さんは台湾で生まれ育ち、独学で日本語を学び、2013年に日本に移住した。「私を育んできた日本と台湾の言語と文化。間違いなく私の文学の血肉となっている」。一方で、「私はあくまで台湾に生まれ育ち、自分の意思で日本に移住した『一個人』に過ぎない。」さらに「作家は『永遠の異邦人』だと読んだことがある。国家や日台友好、祖国の繁栄などといった自分以上のものを背負うつもりはない」と語った。
その発言は「女語」など架空の言葉が話される島を舞台に、国家や言語、性のあり方を問い直す受賞作の主題と響きあっていた。
中略
この日、選考委員の吉田修一さんは、「小説を書くのは大変面倒で時間がかかる。でも決して簡単な言葉で闘おうとせず、面倒な小説の言葉を大切にしてほしいと」激励した。

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