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3年越のアンサー〈ミュージカル「ヘタリア~The world is wonderful~」感想〉

2018年3月。

『ミュージカル「ヘタリア」FINAL LIVE ~A World in the Universe~』(以下ヘタライ)に参戦した私は、もう冒頭から泣いていた。

ミュージカル「ヘタリア」シリーズ(以下ヘタミュ)は、このヘタライをもって終了になることが決まってしまったからだった。

ヘタライに参戦できたことは嬉しかったものの、切ない気持ちでいっぱいだった。始まった瞬間から泣いてしまった。

けれど涙はだんだん違うものに変わっていった。
目の前の光景が本当に素敵だった。愛しているキャラクターたちを、愛を持って役者さんたちが演じてくれている。ヘタミュに出られて幸せだと言ってくれている。今思い出してみても、本当に素敵な時間だった。途中から幸せすぎて泣いていた。

しかもヘタミュカンパニーの皆様全員が「また戻ってきます」と言ってくれていたから、泣きながらも信じて待とうと決めた。

そうして迎えた2021年。

ヘタミュ再始動のお知らせに沸きに沸いた。

*

2021年12月。

不安だったチケットも無事にとれ(ヘタミュNWのチケットだけとれなかったことを未だに後悔している)わくわくしながら会場に向かっていた。

ヘタミュ自体は4年ぶり。楽しみで楽しみで仕方なかった。

しかも開演2日前にトラック事故による大道具&小道具の損壊、プラス音響機器全壊という公演中止になってもおかしくない事態であったというのに、初日の開演時間を1時間遅らせただけで、あとは大阪公演を予定通りやってくれるという。

いやもうこれは、ヘタライのように始まった瞬間に泣いてしまう。そう確信していた。にも関わらずハンカチを忘れたので、会場に向かう途中でハンドタオルを買った。準備はバッチリだった。

そう、座席を確認するまで色んな準備はバッチリだった。

私の座席はB列だった。いや、なんかチケット発券したときにもしかしたらすごい前の方なんじゃないかと期待したけれど、元来ネガティブな私は考えないようにしていた。

実際確認してみたら、A列は機材などで埋まっていたため、B列が実質最前列だった。

Why??????????

待って?舞台近すぎない???運苦手なこの私が??こんな良席に当たる???本当か??本当だな???え??情緒保ちませんけど????

普通なら喜ぶべきことで、いや私も喜んではいるんだけど、ネガティブな私はあまりのことにいっぱいいっぱいになった。耐えれる?この幸せすぎる事態に。帰り事故にでも遭うんじゃない?

座席に座ってから開演するまで30分くらいあったと思うが、上記みたいなことを考えていたら爆速で過ぎていった。ものすごい真顔で頭抱えていたと思う。

いや、待て。私はミュージカルを観に来たんだ。ちゃんと物語に没入して観よう。ちゃんと世界観に浸って帰ろう。キャストさんの顔ばかり見るのは失礼だ。やめよう。一応心の中ではそんな風に思っていた。

開演してすぐ、普の芸術的な横顔のEラインを肉眼で確認できた時に全ての情緒を失った。

え?肉眼でEライン見えましたけど?この席やばくないですか???え??(情緒的に)無理ですけど???????

カメラや双眼鏡越しじゃないのに表情がこんなにはっきり確認できること今後あるか?無いわ。全ての情緒を捨て去ってしまってもいい。出来る限りみんなの表情や仕草を覚えて帰ろう。

というわけで全然泣いてる場合じゃなかった。途中で買ったうさぎ柄のハンドタオルは終始私の膝の上にいた。それどころじゃない。目の前のキャストさんの表情、演技、全てを記憶するのに全リソースを割くことにした。

私の脳の記憶容量はそんなに優秀じゃないのだ。今この瞬間にも少しずつ忘れていってしまっていることが惜しい。全て覚えて帰りたい。自分の感情如きにリソースを割いている場合ではない。

以下に私が覚えられている記憶を書き記していく。

仏は全てが美しかった。身体を斜めに反らせて舞台上で舞っている姿はまるで彫刻のようだった。私の推し彫刻だったのかあと妙に納得した。ダビデ像下から見た時の気持ちってこんな感じなんだろうな。
あと気のせいかもしれないけどお顔が優しくなった気がする。「兄ちゃん」って顔してた。悪い顔もたくさんしてたけど。

英が観客側に身体を反らせるシーンで腰のラインに釘付けになった。あの腰の細さ、それでいてしなやかに筋肉がついているさま。もはや伝説。
ロックを歌ってくれたときに「ヘタミュに帰ってきたんだな」って強く思った。また聴かせてくれてありがとう。

そんな仏と英が背中合わせで椅子に座ったシーン。絵画の一部かと思った。いや絵画だった。

米が出てきた瞬間、舞台が米のものになるのがまさしく米。圧倒的な存在意義と支配感。子米見たときも「帰ってきた感」がすごかったんだけど、よくよく考えればあの子米が作品の一部になってるのすごい。米のすごさというものを表現しきっていると思う。

普は立ち振舞が綺麗すぎた。綺麗なのにちゃんと俺様で、苛烈な生き様を全力で表現されていた。個人的にぐっときたのが「寒い」表現の時に普は小さく手を擦り合わせる演技だったこと。解釈大一致すぎて好き。

墺は変わらず見事な美声を披露してくれていた。しゃがんでいるポーズから圧倒的なビブラートを出していたので、どういう人体の構造をしてるんだろうと不思議だった。人の領域を超えてしまったのだろうか。

西の笑顔が本当に素敵だった。みんなで座ってフラッグを振る歌のところでロマと隣同士で、仏頂面なロマに笑顔!とニコッとしているところを最前列なのでもろに見えてしまい、ロマに向けた笑顔見ちゃった!かっこよすぎる!と動機が止まらなくなった。危ない危ない。

ロマは本当に今作初登場だった?前からいなかった??それくらい違和感がなかった。そうそう、伊のお兄ちゃんってこうだよね、みたいな。格好良さが想像していた1000倍は上回っていた。
それも、伊から見たロマってこう見えているのかなと考えるとエモいって言葉しか出てこない。エモい。

露の可愛さが100倍くらい増していた…今作が一番「露」に見えた。おっとりした笑顔が本当に露だった。おっとりしているのにダンスはキレキレなギャップで脳がやられそうになる。
あと頬がピンクなの可愛い。今作で初めて気づいた。めちゃ可愛い。

日もギャップがすごい。舞台上で誰よりも「小さく」振る舞っているのにダンスはキレキレで絶対に見劣りしない。今作ではストーリー的にメインではないのに、確かな存在感がある。
あとファンサありがとうございました。まじで脳がやられました。前後の記憶を失ったし何の歌だったのかも覚えていませんがあの笑顔だけは覚えています。本当にありがとうございました。

中は泣きそうな顔をしながら歌って踊っていたのがすごく印象に残っている。中は口調がちょっとおちゃらけて聞こえる口調をしているのに、舞台上では誰よりも年上に見える。これが四千年の技なのか…。

今まで気づけなかったんだけど、アンサンブルの皆様ダンスめちゃめちゃ上手い。キレがすごい。確かなダンスの技術で今までヘタミュを支えてくださってたんだと再確認。

上記で大道具&小道具の損害、音響機器が全損と書いたけれど、全然そんなことがあったなんて分からなかった。作り上げられた作品がそこにあった。

*

そして伊ちゃん。

何故私が冒頭にヘタライの話をしたかというと、ヘタライで伊ちゃんに言われた言葉がずっと頭に残っていたから。

「皆さんに夢はありますか?」

当時、答えられなかった。むしろ人生の目標を見つけられず迷いに迷っているところだった。夢ってなんだ。何がしたいんだろう。伊ちゃんが夢はいいものだよって言ってくれているのに、何も答えられないや。

夢ってなんだろうって、伊ちゃんの問いをキッカケに考えるようになった。

あれから3年。具体的な夢ではないかもしれないけど、色々な目標は見つかったよ。あの時では想像できなかった体験もたくさんしたよ。少しずつだと変わり始めていると思う。

今なら3年越しに答えられる。

伊ちゃん、私、夢あるよ!!!

あの時、あの問をしてくれてありがとうってすごく言いたかった。

久々に見た伊はやっぱり頼りなくて、ちっぽけで、ヘタレだ。でも誰よりも豊かな感性を持っている。自分の理想と現実とのギャップに悩み、分からないなりにもがいてもがいて、最後には自分の答えを見つけていた。

ヘタミュで表現されている伊ってすごく等身大で赤裸々で、きっと誰よりも私達に近い。だからこそこんなにも勇気をもらえて、共感できて目が離せないんだと思う。

くしゃっと笑った顔に、何度も幸せをもらった。

素晴らしいミュージカルをありがとう。
私の人生を良い方向に変えてくれて、本当にありがとう。

ヘタミュに出会えて良かった。

*

そんなヘタミュは配信で見ることができますので、良ければここから詳細をチェックしてみてください。

今日は大千秋楽ですね。現地には行けませんが(チケット外れた)応援しています。頑張ってください!

以上ヘタミュ感想レポでした。

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