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“子どもをより理解する”ということは

鳥取こども学園の職員より、施設や子どもたちの様子をお届けさせていただきます! 

執筆:西上恵理(乳児院 鳥取こども学園乳児部 セラピスト)
※本記事は、「鳥取こども学園 学園だより 第48号」より転載しております

乳児部では、今年度からケースカンファレンスにPCAGIP 法(※1)を取り入れています。

月に1度のケースカンファレンスでは「ホームや担当職員への愛着がどう育まれているか」、「気になる行動にどう向き合うのか」等が議題の中心となります。

この課題に対して、ホームや各専門職、スーパーバイザーが様々な視点から意見を出し合い、新しい取り組みのヒントや支援方針が導かれていきます。と同時に、子どもと一番近くで生活を共にする職員は「今はしんどいけど、もう少し頑張ってみよう」、「日々の積み重ねが大事なんだなぁ」と、子どもと向き合う力を得る経験をしてきました。

しかし、紙面上の情報で課題そのものにとらわれて検討するだけでは解決できないものもあるという事に気づき始めました。日々の養育は予想できない事の連続です。職員はケースカンファレンスで導かれた「こうありたい」という支援ができずに葛藤を抱えます。また、子どもの変化はすぐにはおとずれず、出口の見えない状況には変わりありません。だからこそ、PCAGIP法を取り入れてみよう、と思いました。

PCAGIP法では、ファシリテーターが進行役となり、全員が発言できるように順番を決めて進めていきます。まず皆で円陣を作って座り、PCAGIP法のポイント (※2)とグランドルール(※3) 、手続き (※4)を確認してからスタートします。これまでのケースカンファレンスでは子どもの基本的な情報が配られますが、PCAGIP法では、事例提供者も含めエピソードが3~4行程度(検討したい内容)の紙があるだけです。その少ない情報をもとに、参加者は『この子はどんな子なんだろう』とイメージを膨らませていきます。そして、どのような情報があれば問題を解決する糸口を見つけだすことができるのかを参加者が感じはじめます。この作業そのものが子どもを理解しようとする第1歩となるのです。事例提供者は参加者からの質問に対して日常の子どもをイメージしながら答えていきます。もちろん、参加者から質問された事の中には「把握していない」、「わかりません」と言わざるを得ない場面もありますが、それはそれでいいのです。これもまた、大切な情報だと気づくきっかけとなるからです。

さて、PCAGIPを進めていくと、最初は戸惑いや発言に緊張を感じていた参加者も、この事例にのめりこんでいきます。このプロセスを通して、参加者は、自分自身がどのような気持ちで、子どもやこの事例に向き合っているのか、という感情に気づく事になります。参加者の一人がその気づきを言葉を詰まらせながら語り、皆がその声に耳を傾ける場面もありました。毎回、“その時、その回でしか感じる事のできないプロセス”を体験しています。

実際、参加者の一人は『より深くまで子どもの事を知り、考え、見る事ができると感じた。今までの関わりの中での困り感や気になることに対し、職員の思いを安心した環境の中で発言でき、様々な視点からの意見も聞け、思いを共有する事ができた』という感想を語ってくれました。

普段、子どもたちと一緒に生活していると様々な感情が生じてきます。自分自身の気持ちを見て見ぬふりをするのではなく、“この感情は何なんだろう、なんでそう感じてしまうんだろう”という事に少し焦点を当てて考えてみると、また違う視点が生まれてきます。

“子どもをより理解する”という事は、子どもの状況や様々な視点からのヒントを得るだけではなく、その問題に対する自分自身の気持ちや感情に気づき、自分の気持ちも含めて理解していく事が大事なのではないか、とPCAGIPを通して感じています。

※1:PCAGIPの定義 事例提供者の提出した簡単な事例資料をもとに、ファシリテーターと参加者が協力して参加者の力を最大限に引き出し、その経験と知恵から事例提供者に役立つ新しい取り組みの方向や具体的ヒントを見出していくプロセスを学ぶグループ体験である。
※2:ポイント 
・プロセスを尊重し、結論が出なくてもよい。
・事例提供者のヒントになることが出ればよい
※3:グランドルール 
・事例提供者を、被告にしないこと、批判しないこと  ・記録をとらないこと
※4:手続き
発言者は順番を決めて、1人ずつ順番に発言していく。1問ずつが原則。
文献 村山正治・中田行重(2012).新しい事例検討法PCAGIP入門―パーソン・センタード・アプローチの立場から,創元社 

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