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高校演劇老人が大学コピユニ新人になった話

おはようございます、とっくりとっこです。サークル(当時は公認化前)加入したての頃noteを見ていたら記事が流れてきて、コピユニアドカレなるものがあったのを知りました。今年もやるなら参加しよっかなみたいな、ノリでいっちょ書いてみることに。新人ですので、簡単に自己紹介をば。

名前∶とっくりとっこ
大学∶和洋女子大学(千葉県)
団体∶ワヨライブ!
役職∶一応副代表、スタッフ兼キャスト
配役∶Wayolla! 嵐千砂都 役
ダンス未経験、コスプレ未経験、コスパフォ未経験、ラブライブ!シリーズ未履修で加入。
※2023年11月5日、里見祭にて1stワヨライブ!出演

今のプロフィールはこんな感じです。
そして、元演劇部。高校時代は演劇のことばっかり考えてた(というか私のキャパ的に演劇以外のことは考えられなかった)ので、今身についているスキルや過去の経験、AO入試のプレゼンも全て演劇。演劇、演劇、演劇。今回は、演劇とコピユニどこが違うの〜?という話を書こうと思います。きっととっくりならではの記事になるし、同じ元演劇部の人や現コピユニ所属の人が「わかるわかる!」ってなるといいな。

高校演劇・大学コピユニ徹底比較!
※注意
この記事における語句の定義を記しておきます。
◯演劇=高校演劇
◯コピユニ=ラブライブ!シリーズのコピーユニットをしている大学サークルや団体
◯演劇のキャスト=役者
◯コピユニのキャスト=パフォーマー
◯人物=脚本における登場人物
◯キャラクター=ラブライブ!シリーズの登場人物
◯コスプレ=完全キャラ寄せだけでなく、声優寄せや衣装アレンジなどコピユニにおける衣装やそれを着用する行為

また、一部とっくりとっこの所属していた母校の演劇部・所属しているワヨライブ!のみに当てはまることもあるかもしれませんがあまり深く考えずに読んでください。



・スケジュール

まずはスケジュールを比較します。どんな違いがあるでしょうか…?

○高校演劇(とっくりとっこが所属していた某高校の場合、ただしコロナで3年間ずっと変則スケジュールだったので普段のスケジュールに直しました)

4月
新入生歓迎公演(金土2公演)
5月
新人大会(審査あり)
6月
文化祭公演&引退公演(同じ内容、2~3公演)
7月(下旬~8月頭)
[全国大会(去年の関東大会等で選ばれると次の年の全国大会に出場できる、引退もしくは卒業した役者は入れ替え)]
8月
全国高等学校総合文化祭 地区大会(ここで選ばれると県大会へ)
9月
校内公演(大会と同じ脚本、時期はまちまち)
11月
[県大会(ここで選ばれると関東大会へ)]
12月
校内クリスマス公演(金土2公演)
1月
[関東大会(ここで選ばれると全国大会へ)]
3月
卒業公演(卒業する先輩に向けて、+校内公演で2公演)(4月の新入生歓迎公演と同じ脚本)

こんな感じでバンバン公演を打っていきます。[]がある大会は予選を勝ち抜いた学校のみ。1年を通して次の大会の準備をする学校もありましたが、うちは最低3本、多くて10本近くの劇をやります。高校演劇の大会にはそれぞれの高校で60分まで(新人大会は15分まで)という制限時間があります。30分〜50分程度の劇をやるのがセオリーですが、うちは台本を書く先生が60分ギリギリで勝負していました。更に校内公演では何をしても許されるので5分〜20分の劇を5本など役者のキャパ範囲内なら何をやっても自由です。このスケジュールの場合1公演にかけられる時間は脚本を含めて最長4ヶ月ってとこでしょうか。

とっくりが印象に残っているのは2年生時の新人大会と3年生時の引退公演です。新人大会では2~3週間で15分劇をつくりました。わりと自由にできたので楽しかったですが短いですね。3年生時の引退公演は3週間で1時間半の劇をつくりました。

◯コピユニ
春頃
・新入生歓迎公演
・学祭シーズン①(大学によって時期に差あり)

・なんかやったりやらなかったり

・学祭シーズン②(大学によって時期に差あり)
冬頃
・新歓(学祭で気になった人などを囲い込む)
春休み頃
・ワンマンなど

こんな感じでしょうか。和洋女子大学の学祭はシーズン②の11月頃で、ワヨライブ!も特設ステージに出演しました。活動している身としては、こんだけ期間あっても振り入れやその先って大変だなぁと思いました。里見祭までは4~5ヶ月かけたはずですが、個人的にはあれもこれももっとやりたかったなぁばかりです。

こんな感じで、公演数でいえば演劇部の方が多い気がしますが出身校が多かっただけかもしれません…。周りからコピユニの話を聞くともっと公演打ってるところもあるし、団体によりけりですね。高校時代は顧問から「最低でも年に3本程60分劇をやれたらいいね」と言われていたのでボチボチ達成はできたかな。それと、高校演劇の場合は運動部より集まって練習する(平日一度も休みがなく、公演前だけと言っておきながらずっと公演前なのでたいてい土曜練習がある)のでやろうと思えば毎日ひたすら通しをできたのがデカいかもしれません。

・公演までの流れ

次は実際にステージに立つまでの過程を比較していきます。

◯高校演劇

①戯曲もしくは脚本を用意
戯曲とは劇作家が作った文学作品全般のこと、脚本はそれを上演用にしたもの、台本はちょっとした言い回しなどにアレンジを加えた決定稿。人物をカットしたり展開に大幅な変更を加えることもありますが、あくまで脚本の意図を組んで物語をつくっていきます。
戯曲集やネットを漁ったり、先生や生徒が創作したりして用意する。

②本読み→オーディション
役者希望の部員が台本にある程度目を通し、適当な役をふって読み合わせ。その後役を入れ替えて何パターンか読む。オーディションは顧問の先生や演出、他スタッフなどが集まって役者を1人ずつ呼ぶ→配役希望をとる→役者にセリフの指定を出す→役者が読むところを聞く→スタッフが選ぶといった流れ。このとき、演出側から希望していない役のセリフを読んでほしいと要望が出る場合もある。また、役に対して役者希望者が多ければ最終的にスタッフへ回る部員も出てくる。

➂配役決定、本読み
配役が決定し、本番通りの役者で読み合わせ。あとはセリフを入れていく(コピユニでいう振り入れ)。同時進行で演出以外のスタッフの役職を決定。衣装、大道具、小道具は何が必要かをト書きやセリフを頼りにあぶり出す。音響・照明はどんな音響どんな照明が合うかシーンごとに書き出していく。演出や舞台監督を中心に公演日の見当をつけて、逆算してスケジュールを組む。

④立ち(立ち稽古)
仮で稽古場にステージを設定し、場面ごとに区切って練習…失礼、「稽古」する。この頃になると台本片手にチラ見しながらやったり、完全に台本を外したり役者の進捗に差が出てくる。ここですでに「読む」のではなく「動く」ということを始める(コピユニでいうフォーメーション練習)。音響は音源があればスマホからでも流す、照明は声で合図を出す。
場面を終えたら演出(を中心としたスタッフ)と役者で意見を擦り合わせ、立ち位置やセリフのニュアンスを探る。気になる部分や意識したいポイント、演出からの指示は台本に書き込む。

とっくりは立ちでセリフを完璧にする派なので 台本ガン見→立ち→反省と休憩(ガン見)→立ち みたいな感じ。立ちまでに完璧に入れてくる人もいますが、とっくりには無理です…その代わりリハでも本番でもセリフを飛ばしたことはほぼありません(引退公演だけは1公演目で一度だけ長台詞を飛ばしました、どうなることかと思ったけど思い出せました)。

④通し(通し稽古)
本番で使うものを全て使ってやるのが理想、しかし高校演劇に時間はないのでものが揃わなくとも始める(粗通し)。時間をはかりながらやるのがポイント、時間内に収めつつ演りやすいペースを掴む。通し後は反省会。ここがどうだった、ここはどうする?と役者もスタッフも総出で意見を出し合い、ひたすら台本にメモメモメモ。そしてもう一度通す。

・設営(場当たり)
実際のステージで大道具を組んで立ち位置などを確認、同時に場ミリもする。コピユニでいう場ミリは等間隔に番号がふってあるが、演劇では大道具の配置場所や重要なシーンの立ち位置などに直接印をつける。立ち位置は☓、モノの位置は「」で四隅を囲む。校内公演の場合は立ちの前に場ミリ、大道具は完成したものから配置する。

・リハ(ゲネプロ)
時間をはかり、衣装、化粧、大道具・小道具、照明、音響など全てを本番通りにやる。2~3回は確保したいところだが、厳しいスケジュールだと1回もできないことも…。

◯コピユニ

・配役決定
パフォーマーが演じるグループ、ユニット、キャラクターを決定する。配役の決定方法は団体によって違うかもしれませんね。単発の企画なんかだと〇〇役募集!みたいな形もありますよね。

・セットリスト決定
候補曲を出してテーマに沿って調整する。(単発の踊ってみたや企画の場合やりたい曲から決めることもあるが)

・振り入れ
ダンスの振りを入れる。ワヨライブ!では個人で行うことのほうが 多い。曲責などの役割がある団体もある。

・曲ごとに練習
複数人でフォーメーションを確認しながら振りを合わせる。「あわせ」や「フォーメ練」などと呼ばれますね。

・通し
ステージでの一連の流れを練習、セットリストを一通り踊り MC を入れる。

・リハーサル
衣装、化粧、照明、音響などをできるだけ本番に寄せて行う。リハで通しができるかどうかはスケジュールによってまちまち。

コピユニの説明文がやたら短いですが、詳しく書かずともこれもこれもあるよね〜と思い浮かぶと思うので割愛しています。正直初めてのコピユニ&1stワヨライブ!の限界スケジュールでハッキリ覚えてないこともあるのでこれが無いよ?は脳内補完でお願いします(汗)

戯曲/脚本探しは音源を探すのに近いかもしれません。話し合って曲決めて、アニメ尺ならどこから音源持ってくる?とか、これってあのサービスでダウンロードできるかな?みたいな。コピユニ団体の場合は立ち稽古=複数人での振り入れや曲ごとの練習みたいなイメージでしょうかね。曲責は何に当たるだろう…演出ともまた違うけど、どんな振りか説明するのは演出がどんな意図があるか話すのに似ているかも。

・役作りのプロセス


演劇部だったとっくりはどんな役作りをしてるの〜!?ってか演劇の役作りってな~に〜?っていう話になった(ような気がする)ので役作りについて比較していきます。

◯高校演劇

① 脚本を読む
まずは脚本を最初から最後まで読む。大まかな特徴をつかみ、自分がやってみたい役や自分にハマりそうな役に見当をつける。演劇の場合は超有名な脚本…それこそロミジュリみたいな…でなければ元々知っているキャラをやることはない。てか、演劇部はロミジュリやらない。

② 声に出して読む
読み合わせをしたり、一人で読んだりとにかく大きな声で読んでみる。セリフやト書きから読み取れる範囲でイメージを探る。

③ セリフ入れ
配役決定後はとにかくセリフを入れる。感情を込めるためにまずセリフを入れるのは、振り入れをするのに似ていると思います。

④ 立ち稽古
セリフが入ったらそこに「表現」を足していく。ただの「声」だったものに動きがつき、表情が付き、緩急、明暗、喜怒哀楽がつく。

とっくり個人としてはなかなかセリフが入らず、③と④は同時進行でやることが多いです。いちはやくセリフを入れてから表現を追求する方もいますし、セリフを入れながら役を固めていく方もいます。

じゃあ具体的にはどんな役作りをしているのか。

「どんなおはようを言うか」「兄弟/姉妹はいるか」「下の名前は?」「クラスメイトからはどんな風に思われているか」「得意科目は?」といった具合に人物を深堀りしていきます。このとき、脚本では描写されていないポイントまで想像して役を組み立てていく。親しい人には「おはよっ!」っと元気に返すが、特に仲良くないクラスメイトには敬語で「…おはようございます。」と返す、みたいな。人物の解像度をあげることで、「この人物とはあまり親しくないからこのセリフはこんな意図かな?」「この人物に対しては自分から近づいているから好意的なのかな」という風に人物としての『振る舞い』をつけていきます。

控えめな性格なら猫背にしたり、会話に辿々しい感じを出したり。活発なら大股で歩いたり、動きに勢いをつけたりと一口に表現といってもたくさんあります。とっくりの場合、男役の時は足を開いて重心を下げる、小学生役の時はとことこ歩くように意識するといったことをしました。他にも細かい仕草やブレスのタイミングまで気を使って役に入り込みます。

とっくり個人がよく褒められたのは声色で、シーンや役によって声のトーンを使い分けていました。いい声ですね〜とか憑依型ですか?とか言われました。憑依型ではないです。ちなみに、演劇では基本的に変に声を作るのは小手先の悪手とされているので本当は辞めたほうがいい。とっくりはそれを完全に自分のものにしたので表現の1つとして取り入れました。楽しい時は自然に声が高くなる、暗い時は低くなるみたいなリアリティに繋がるが舞台で違いが伝わる絶妙な加減を狙ってやりました。

⑤ 立ち稽古その2
世の中には一人劇というものも多く存在しますが、高校演劇ではせっかくならみんなで出た〜いとスタッフの人数をギリギリまで絞りながら劇をやることのほうが多い気がします(部員10人なのに7人劇を演るなど)。

複数人での劇、つまり登場人物同士の絡みがあるということです。違和感が無いかつしっかりと動線を確保した立ち回り、人物同士のボディタッチ(女の子同士が抱き合う、王子が姫を抱きしめるなど)、テンポよく進む会話。板の上の演技を見るというのは距離がある定点で物語が展開されるということ。飽きないための工夫は役者同士のやり取りにもたくさん隠されています。

例えば
・AとB抱き合う
というト書きがあるとします。このとき、AとBが抱き合えば脚本通りではありますがここには意図があります。更に、脚本家(もしくは演出)には既に正解が浮かんでいます。じゃあ正解を引くには…?
どんなシーンか想像してみましょう。長年離れていた親友のAとBの感動の再会シーン?女子高生同士のAとBが盛り上がって笑いながら思わず抱きつく日常シーン?それともAとBは親子とか!

ここでは仮にAとBは女の子で友達同士、ちょっとしたことで盛り上がって抱き合うこととします。Aの方が活発でBは控えめ。じゃあどうやって抱き合うのがシーンにあっているか。普段通りならAからギュッ!っと抱きついて、Bが僅かにあとから手をまわす。といったところでしょうか。しかし2人きりだとBも周りを気にしなくていいので、同時にギュッと抱きつくかも。そもそも抱きつくのはAがやや後ろから?それとも真正面?

こんな風にシーンにふさわしい動きを探って大体の動きを決めます。歩くシーンや取っ組み合いのシーンなど動きが目立つシーンはそれこそ振り付けのようにあらかじめリズムまで決めておきます。歩くなら自然に移動できる歩数や歩幅、取っ組み合いならセリフも動きも面白いであろう「間」を狙って決めます。

⑥通し稽古
演劇の世界でよく言われることとしては「通してから気付くことのほうが多い」ということ。これは単純な話、今までいくつかの話を繋げていたのが1つの物語になるということ。これまでも同じことをやっていたつもりでも、初めて気付くことが結構ある。場面転換だったり、場面ごとの照明の切り替えなんかは分かりやすく、実際に通してから演出が大きく変わることはよくあります。

今までは普通に終わってたけど、通してみたらここは泣きの演技をしても大袈裟じゃないなとか、この人物はこんな感情になったんだっていうのが分かりやすくなります。照明や音響の演出もノッてきていよいよ劇らしくなってリハ、本番を迎えます。

◯コピユニ

①アニメの履修や情報収集、楽曲を聴く
とっくりのようにラブライブ!シリーズを知らない人はこのあたりからですよね。とっくりはサブスク周りの事情で完全な履修は一旦諦めて公式YouTubeのダイジェストとアニメの楽曲シーンを見まくりました。

②振り入れ
まずは7~8割くらい振り入れ、見ながらであれば完璧に踊れる段階にする。その辺りである程度キャラ(声優)に寄せた動きを出していく。他のキャラとの差別化や動きの細かいニュアンスを入れ、口パクや表情を入れ始める。

③振り入れその2
振りとフォーメーションを完全に入れ、更に細かい部分を追求する。顔の表情や他のメンバーとのアイコンタクトを入れていく、視線にも注目して動きをつくる。ワヨライブ!では特に揃えたいシーンをピックアップしてポイントを絞ることで揃ってる!感を強調しました。アイコンタクトもここ!と確認したし、とにかく個人のこだわり×5人分を擦り合わせました。個人の役作りというより皆でLiella!になるための役作りって感じかな。

④通し
映像を撮りながら練習→確認や指摘→それを踏まえて練習の繰り返し。ここは演劇でやってきた反省会と同じですね。ここでもこだわりを擦り合わせて5人でLiella!になることを目指しました。

こんな感じかな。コピユニの役作りは演劇の役作りと違うのでとっくり自身苦労しました。本番直前はかなり苦しかった記憶があります。ありがたいことによく「すごくちーちゃんだったよ!」と褒めていただくのですが、正直に暴露するととにかく目立つ動きを真似ていたに過ぎないのでとっくりの技術はたいしたことないですマジで。大事にしたのはちーちゃんの感情と自分が楽しむことだけで、というかそれ以上は抱えられませんでした。

・キャストと性別

ラブライブ!に限らず、コピユニ界隈には大きな特徴があります。その1つが性別だと思っています(分かってると思いますが一応書くとここでは単純な身体的性別、つまり体格などの違いについての話をします)。

ラブライブ!のコピユニでは全員が女子高校生役。現役中高生も大学生も社会人も女性も男性も女子高校生役。改めてこれはすごい…大変なことだなと思います。今日も全国(というかもはや世界)のパフォーマーたちがコスプレをし、キャラクター(声優)そのものを目指して動きや表情の分析と再現に取り組んでいることでしょう。

コピユニをやるうえで必要なことはコスプレをすることと踊ること。大まかにこの2つがポイントだと思います。

コスプレには①同性キャラのみ ②異性キャラのみ ➂男女どちらもやる といったように様々なスタイルがあります。コスプレだけで言えば男性が女子高生役をやることは不自然ではありません。異性装レイヤーでも、同性かと見紛うほどクオリティーが高い方も見かけますよね。コスプレ自体はかなり異性に近づく方法やキャラっぽくする方法が確立されているように思います。声優寄せや男性衣装アレンジをする団体の方はあまり参考にならないかもしれませんが、動いてない状態をいかにキャラに近づけるかというのは1つのポイントかと思います。

コピユニをやるうえでの壁である体格差は動きにも出てきます。キャラのように可愛らしく動くために研究を続ける人も多いんじゃないでしょうか。男性がラブライブ!のコピユニをしても受け入れられる理由は、コスプレ自体の特徴の他に「こだわり」だと思います。コスプレのクオリティーにも繋がる話ですが、動きの完成度からはこだわりがにじみ出るものです。「この団体のこのキャストはこの動きが好きなんだな」「この団体はこの曲が特に気合入ってるな」といったことは案外見えるものです。そして、こだわり=愛。これはパフォーマーと観客がライブという空間を通して共有できる感覚であり、大きなエネルギーを伝えます。コピーするからにはやはり愛というのが大きなポイントなのではないかなと思います。

コスプレしかりパフォーマンスしかり、新人にも優しいというのもあるかもしれません。大歓迎の旗を振りたい…!(もっとも私はまだ新人ですが)


Q.ところで演劇って男子が女子役とかって許されるの?

A.「許される許されないというより機会がない」です。

これはどういうことかというと、演劇部というのは女子のほうが多い傾向にあります。もちろん学校や年代によって男女比に差はありますが、どの学校も男子部員の獲得には苦労していることが多いです。実際とっくりが入学した時は唯一の男子部員だった先輩は早々に引退し、3年になってとっくり自身が全力で勧誘に走り回ったら奇跡的に3人入部。後に2人増えて5人になったとか。

そんな状況なので、女子が男子役をやることは結構ありますが逆はなかなか無いです。

もう1つの理由は単純に「男子が男子役やって女子が女子役やるほうが話が面白い」んです。

これにはちゃんと理由があって、「男子が男子演った方がリアリティがあっていいよね」というだけの話ではありません。そこがコピユニと演劇の違いでもあります。
コピユニはコピーする元となるキャラ(声優)というはっきりとした像があります。これは基本的に観客もパフォーマーも共有している共通の像です。例えばLiella!のコピユニのライブを見に行くならキャラ名と髪型くらい予習していけばなんとなく「あれが澁谷かのんね」といったことが分かるわけです。
対して、演劇で演じる人物には観客と役者で共有している共通の像なんてものはありません。殆どの場合キャラクター初見の状況でやります。つまり、キャラクターを想像する時は役者の見た目がそのまま像を結ぶ。観客は役者から読み取れる情報とストーリーで人物を構成するから、最初の印象…つまり役者の性別や声などに引っ張られます。男子が演っていれば基本的に男性役なんだろうなと思うし、女子が演っていれば女性役なんだろうなという印象がスタートなわけです。また、審査においても女子の男性役はよほどクオリティーが高くなければ評価されにくいように感じました。1年時の大会では女子部員2人が男子高校生役で出演しましたが、「あのシーン、男の子だったら面白かったのにね」なんて言われたこともありました…。

もう1つ大きな原因はきっと「オカマキャラ」の存在です。演劇はほんの数年前までいわゆるオカマキャラで笑いをとるということをよくやっていました。しかし50年前で時が止まっていると揶揄される高校演劇にもついに多様性うんぬんの波が直撃、愛すべきオカマキャラはほとんど見掛けなくなりました。そして界隈全体が「オカマキャラを出しておけば面白い、はもう古い」という価値観にシフトチェンジしました。

ここで問題なのは「男子生徒がやる女子役」と「オカマキャラ」の区別です。仮にどちらも用意して並べた場合、セリフや衣装など何から何まで別物になります。しかし、前述の通り演劇は基本的に男子が男性役をするので女装した男子がステージに上がった瞬間、観客は「これはオカマキャラかな」といった思考に切り替わります。最近はジェンダーやセクシャルマイノリティを題材に扱う脚本も増えてきたので「セクシャルマイノリティ役かもしれないな」と考える人もいるかもしれませんね。まず、女性役だと思う人は少ないため物語の展開に集中し辛くなってしまいます。そのため男子は男性役を演じることが多いのではないでしょうか。

もう1つ演劇とコピユニの違いとして、一定数キャストのファンがいるということ。演劇でもごく僅かに同じ地区の役者であの人すげ〜→あ!去年の大会ですごかった人だ!みたいなことはありますが、固定のファンはほぼいません。対してコピユニはパフォーマー自身にファンや界隈の友達が多くいたり、団体単位での活発な交流がありますよね。ここは、大きな違いだなと思います。

・キャストの役割

最後に演劇とコピユニそれぞれのキャストが持つ役割についてです。※ここは他の内容よりとっくりの考えが強く反映されると思います。
役者もパフォーマーも演じる人物・キャラクターを目指すということは共通していますがどんなステージにしたいかというのはかなり違うと思います。とっくりは、

◯役者には人物の気持ちを表現し、脚本の根っこにあるメッセージを伝えるという役割

◯パフォーマーにはキャラクターの気持ちやダンスを表現し、自分たちの熱を伝えるという役割

があるんじゃないかなと思っています。もちろん演劇もコピユニも熱と愛がなければやっていけませんが、言葉にするならこんな感じじゃないかな。役者は人物自身を誰より理解して像を構築+ストーリーとストーリーに込められたメッセージを届けるという明確な役割があります。対してパフォーマーの役割を言葉にするなら自分の熱を伝えるという曖昧なものになります。コピユニでやりたいこと…伝えたいことは団体やパフォーマーによって大きく違うからです。

なのでコピユニでは時にキャストの方が目立ってるやんけ、みたいなことがあるらしいですね。正直、それは個人的にはめちゃめちゃアリ。むしろ色が出るくらいのほうが好みまである。というかそれは演劇の場合どうなん?ということなんだけど、正直わからん!

しかも、演劇の場合怖いことにだんだん「似てくる」。これはどういうことかというと大きく2つに分けて「人物がだんだん役者に馴染んで寄ってくる」場合と「役者が人物に近づいてくる」場合がある。え、前者ってコピユニのキャストの方が目立ってるのと何が違うの?って思うかもしれないんですが、ちょっと違う。あくまで人物のまま役者に似てくる…。

とっくりは役者(とっくり)が人物に近づいていくパターンなんですが、正直言ってこれは恐怖。いわば1つの肉体に魂が2つ入ったような状態が続いて、どんどんとっくりと演じる人物の境目が消えていきます。人物を掘り下げると自分との共通点が出てきて共感することから始まり、相違点が出てくることで人物の方から自分を侵食されるような感じ。例としては口調、態度、仕草、思考まで変化することがあります。マジでちょっとしたホラー。

まぁそんな怖いことを書きましたが、演劇における最大の役作りは思考パターンの解析だと思ってます。一見難しそうだけどようは前述の通り、人物の周りのことや脳内を想像してそこから人物を組み立てていくということ。

そして演劇の役の決定もオーディション!ってイメージが強いですが人数や演出によってまちまちとしか。脚本を書いた本人がいればもう誰が誰でというのはオーディション前からほぼ決まってる場合もあるし、逆にいなければ本人たちの希望をかなり強く反映させることもあります。向いてる向いてないでかなり向いてる役、なんなら当て書きだとしても自分とのギャップはあるので結局皆苦労はするし悩むし頭おかしくなります。

とっくりの感覚ですが演劇で役作りをする時はコピユニより更に自分を蔑ろにするかも。言葉がより多く自分を通って出ていくからかもしれませんね。それくらいかなぁ。あとはとにかく立ちや通しで感情を掴んだら共感、再現、共感、再現。とっくりは涙ぐむシーンで共感しすぎて号泣したことがあります。

Q.じゃあ演劇の役作りをコピユニでどう活かしたの?
A.正直ムズすぎて活かせた気がしない!

…です。見れる範囲の映像を見まくって、ラブライブ!スーパースター!!の世界にどっぷり浸かって、楽曲を聴きまくりました。とにかく感情、感情、感情。私にできるのは共感なので、ちーちゃんと共感できるポイントを探しまくりました。

感情が入れば、ちーちゃんと岬なこさんが億倍可愛く見えてくる。あとはもう岬なこさんの動きを研究して再現したいポイントを絞って徹底的にコピー。うちは完コスのアニメ寄せなのでアニメの中の楽曲シーンで特に再現したいシーンをピックアップしてそこをこだわりました。他には、役に話しかけるというのが演劇でもよく使われてる気がするので(ほんまか?)毎日語りかけてました。

ちーちゃん、君は今どんな気持ちで歌って踊ってるんだい?

…。

答えは返ってこないけど、これでいい。
彼女と同じ景色が、とっくりには浮かんでいるから。

◎まとめ
なんか気付いたら10000字書いてました。
(追記:3月20日に加筆修正しました、12000字近いです。どうして?)

結論:演劇人には話しかけるな!

というのは冗談で。
最初に書いた通り高校時代は演劇しかやってこなかったので演劇の話しか出来ないのですが、もはや演劇してた頃の記憶が薄れてきて恐ろしいなと感じております。

一度魔が差して舞台に立った同志なら分かると思いますがもう舞台が無かった頃には戻れないですよね。とっくりとっこもワヨライブ!加入当時はスタッフ志望だったのですが、気付いたら元気いっぱい踊ってました。そこらへんの話はまた近い内にお話しましょう。

超ボリューミーな記事ですがここまで読んでくれたあなたに特大感謝、訳わかんなかっただろぶっちゃけ!!
責任持って答えますので、お手柔らかにお願いします。

スペシャルサンクス:たまたま演劇の話を投稿したああああ様、追い込みスペースに来てくれた皆

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