【レビュー】傑作!広告コピー516
2012年に初版が出た本書。
80年代、90年代、2000年代のコピー解説ですので、
今とはだいぶテイストがちがうコピーがたくさんあります。
広告のコピーは時代を大きく映し出すもの。
現代でこんなコピーで打ち出したら、
コンプライアンス違反だとか性差別だとか
言われそうですが、それも時代(笑)
本作の中で、わたしの心に刺さったコピーをいくつかご紹介します。
①私、誰の人生もうらやましくないわ。
松下電器産業/2000年/シングルを生きる人が読むHPの宣伝コピー
人と競争し、クラスで1番・学年で1番を目指す学校教育で育つと、
人と比べて「自分なんか」って思ってしまう。
でも、みんなちがうんだから、そもそも比べることが間違ってる。
そんなことに気づかされるコピー。
②毎日ビールを飲んだ。それでも渇いていた。
キリンビール/1992年
ビールを飲んで騒いでも、その瞬間はたのしいけどなんか寂しい。
酒に頼りすぎても、心の渇きまでは癒してくれない。
③あなたの夏が、私の夏でありますように。
西武セゾングループ/1986年/セゾンカード
こんなに胸キュンする広告コピーはズルい。
好きな人と同じ思い出をつくりたいと思う乙女心は、
時代が変わっても同じです。
④さよならしたばかりなのに、また、君に会いたくなりました。
ファミリーマート/1986年
有名な「あなたと、コンビに」の3年前のコピー。
これ、一見すると百貨店のバレンタインデーとかクリスマスとか、
男女の恋愛に関する商売をしている会社のコピーに見えますが、
ファミリーマートのコピーっていうのが"ミソ"だと思うんです。
24時間空いてるコンビニ。
いつだって会いにきていいよっていうのを男女の恋心で描いています。
⑤キミが好きだと言うかわりに、シャッターを押した。
オリンパス商事/1980年
80年代は「男は背中で語れ」っていう時代。
こういう、不器用で好きなんてとてもじゃないけど言えない、みたいな
シャイな男の人が多かったんじゃないかな。
⑥カンビールの空カンと破れた恋は、お近くの屑かごへ。
サントリー/1982年
本書の中で、サントリーの広告コピーが結構紹介されていますが、
その中でも私が1番好きなコピー。
失恋したら、サントリーの酒をかっくらって、
空カンと一緒に恋心も屑かごに捨ててしまいなさい。
はい、仰せのままに。
⑦彼女がほしい?その鼻毛で?
松下電工/1997年/鼻毛カッター
かなり直接的な言葉で煽ってます。
このコピーにドキッとして鼻毛カッターを買った男性は多いのでは?
⑧楽しい仕事は、ラクじゃない。
リクルート/1985年
2020年の今、好きなことを仕事にした方が楽しいし、いいよね
って価値観が一気に普及しています。
でも、楽しい仕事は、ラクじゃない。
リクルートが言っているんですもん。
大変に決まってます。
⑨給料は35歳で差がひらく。生きてきた時間が同じでも。
リクルート人材センター/1998年
思わずヒヤッとしました。
まだ25歳、されど25歳。
毎日一生懸命生きよう。
⑩おとなから幸せになろう。
長谷工コーポレーション ブライトンホテル/1992年
今のおとなはみんなつまらなそうに生きてる。
まあ、日本はずっと不況だからね。
でも、そんなおとなを見て育つ子供は、
もっと不幸だよ。
⑪お金がないと生きて行けない。人間は弱いね。
さくら銀行/1993年
この言葉を言ってるのが銀行だと思うと、なんか笑けてくる。
人間はお金がないと生きていけない弱い生き物だって言って、
金貸すんでしょ?
⑫家を出ることに、最後まで反対した父が、いちばんに電話をくれた。
ジワッと、元気が出た。
第二電電/1995年
SNS中心時代、プライベートで電話をする機会なんて
めっきり減ってしまったけど、
こういうコピーを読むと、電話のあたたかさもいいなぁ。
⑬なんにもしないをするの。
西武百貨店/1991年
疲れたから今日はなんにもしないって決めても、
なんにもしないに不安になって、結局なにかしてしまう。
なんにもしない時間を、もったいないでなく、贅沢だと感じられる
おとなになりたい。
⑭今日は、明日の思い出です。
ソニー/1992年
どんなにつらくても、情けなくても、あがいたっていいじゃないか。
いつか思い出になるんだから。
⑮時は流れない。それは積み重なる。
サントリー/1992年
アチーブメントという会社の代表をしている青木仁志さんも、
「人生は死ぬまでの時間の総和である」という話をしている。
時は自動的に流れて過ぎ去ってゆくものではなく、
あくまで死ぬまでの時間を使っているに過ぎないのだと。
これは自分の時間だけでなく、
他の人の時間にも同じように言えること。
安易に遅刻しないように、気をつけたい。
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