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20220311ワークショップ①砂連尾

開催日時:2022年3月11日 13:30~15:30
場所:グレイスヴィルまいづる-東京(Zoomオンライン)
内容
1. K2さんとトークセッション
1-1 ストレッチ
1-2 まねしあう
  途中から浦岡さんギター
2. Mさんとトークセッション、途中からNさん
2-1 Mさんとトーク
   Nさんとトーク
2-2 ストレッチ
2-3 ダンス
  途中から浦岡さんギター

***
砂連尾理(ダンサー・振付師)

 この日も先月に引き続き、前半はK2さん(※1)と、そして後半はこの日初めてお会いするMさん、Nさんの2名の方とのこじんまりとした、けれどじっくりお話ししながらのワークを行いました。

 ここ最近、ちょこちょこ参加くださっていたK2さんとは初めての1体1のワークで、僕は彼に話しかけながら、動きを真似てもらうことから始めていきました。

 同じKだけれども、女性で常連の、そしてお茶目なKさんと比べると、男性のK2さんの動きはかなりゆっくりです。また、僕の動きを追う眼差しも、ややボーッとした感じで、僕の動きを真似るのにちょっとした時間差が生まれます。昔、テレビのニュース番組で海外との衛星放送が始まった頃に生じていたズレというと今の若い人にはちょっとイメージしにくかもしれないけれど、K2さんは僕の動きから2、3秒、時に4、5秒遅れてから動き出します。

 彼の動きは女性のKさんと比べると、私の動きをきちんと真似るというよりは、ちょっとふんわりとしています。例えて言うと、印象派のモネの絵のようなタッチで動いているといったら良いでしょうか。くっきりとではなくふんわりと、けれどもしっかりとした雰囲気のダンスがK2さんの動きから生まれます。

 K2さんのダンスは独特で、時に気まぐれで、また、こちらの意表をついてくる展開もとても刺激的でした。

 僕が右手の人差し指と中指を立て、チョキ(ピース)のポーズをした時のことです。彼はそのポーズをまねることなく、その前の両手で頬を撫ぜる動きへと戻っていきました。

 その時は、指を立てるのが難しかったのかなと思ったのですが、それからしばらくしてから、私が行なった人差し指、中指、薬指の三本指を立てたポーズは、ぎこちなかったけど、しっかりと真似をしてくれました。

 二本指はやらないけれど、三本指はやってみる。その基準が一体どこにあるのかは分かりませんが、その後のセッションでも、K2さんにとって真似ようと思わない動きが僕から示されても、彼は決して僕の動きに合わせることはありませんでした。

 そんな状況でも、彼は僕とのダンスを中断することなく、その日、僕が「終わりましょう」と言うまでずっと続けてくれたのです(その間なんと20分少々!)

 指のエピソード以外にもその日は興味深いやり取りが幾つか起こりました。たとえば、一緒に動き始めて10分を過ぎた頃です。

 私は寝転がって仰向けの体勢になり、zoomの画面には私の両足裏の動きしか映らない状況になりました。画面から僕の顔が消えたことでそれまでのやり取りが終わってしまうのではと心配していたのですが、そんな状況になっても、K2さんのダンスは止まりません。K2さんはじっと画面を凝視し、僕の足の指のピクピクする動きに反応し、彼の手の指の微かに震わす動きへと変換し踊り続けたのです。

 そして、その日のセッションの終盤に差し掛かった頃――その時僕は両手で肩を押さえたような格好で肘を動かしていました――、K2さんは何を思ったのか、いきなり両手で鼻を触る動きを始めました。

 僕は動きの展開に驚きながらも、今度は僕が彼の動きを追う形になります。いつの間にか二人の関係は逆転していました。僕はすぐに動きを仕掛けて関係を再び元に戻そうと試みたのですが、そんなのはどこ吹く風とばかりに、K2さんの鼻を触るダンスはしばらくの間続いたのです。

 この日のラストで、僕はK2さんにバイバイと手を振る動作をしながら、後方に1分くらいかけゆっくり寝転がるようにしながら、Zoomの画面から消えていったのですが、Kさんは僕が消えていった画面にじーっと目を向けながら、バイバイの動きを続けていました。

 それこそ隣で伴奏をしてくれていた浦岡さんのギターの音が消えた後も、動きは止まりませんでした。

 画面下から、僕はそんなKさんの動きをずっと見ていました。

 その動きは、K2さんの印象派の絵のような動きと輪郭を、より一層泡のように溶かしていき、それがダンスであるとか、その人がK2さんであるとか、そんな意味さえも消えてなくなっていくかのような、そこにはただの“揺れ”が立ち上がっていました。


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※1:いつもとつとつダンスに参加してくれるKさん(女性)と区別するために便宜上この男性をK2さんと呼ぶことにする。(豊平)


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