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20220825ワークショップ③石田

開催日時:2022年8月25日 13:30~15:30
場所:グレイスヴィルまいづる-東京(Zoomオンライン)
内容:
4人の参加者とそれぞれ1対1で砂連尾さんとワークショップ。
1.Aさんと1対1で20分程度
2.KTさんと1対1で20分程度
3.Kさんと1対1で20分程度
4.AKさんと1対1で20分程度

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石田智哉(映画監督)

 認知症の方とのダンス、しかも違う場所にいる中で展開していくWSにはじめは驚きを隠せなかった。見学も今回で3回目となる。少しずつ参加者一人ひとりの話や振る舞いに、心を落ち着けた態度で向かい合えるような感覚が生まれてきた。

 そして、見学をしている時以外にもWSの光景が、ふと頭に浮かぶようになってきた。『二人は若い』を歌うAさんのことを思い出して自分が口ずさんだり、WS中のこぼれるようなチャーミングな笑顔のKさんの姿を思い出したりと。

 「とつとつダンス」に今回初参加のKTさん。耳が聞こえにくいというKTさんとの対話は、職員の浦岡さんと仲井さんによるホワイトボードへの筆記を介しながら行われた。

 砂連尾さんが「こんにちは」と書く。顔を激しく横に振り両目を右手で覆い「殺さないで!」とKTさんが話す。続けて「じゃれお」と書き、仲井さんがKさんの隣にいて手元のボードに書き写す。書き写す間、砂連尾さんがKTさんに向けて身体を動かす。ボードを見た後KTさんも自己紹介をする。

 「事務員をしていた」とKさん。職員さん曰く「体操好き」というKTさんが当時やっていた体操へと話題は移る。「どんな体操?」と砂連尾さんが尋ね、Kさんの動作を真似る。両腕を上げたり、ほっぺたを引っ張ったり、手のひらでほっぺたをこすったりしている。だがKTさんの表情にはまだ緊張があるように思えた。

 砂連尾さんが「(仕事は)楽しかった?」と聞いたとき、KTさんがふうっと体を起こした。それまでは車いすの背もたれに背中を預けた姿勢だったが、お尻をあげ腰が安定した姿勢に変わったように見えた。

 「そうや〜まあね[しばらくの間]楽しかった、その当時やで忙しかったでね[後略]」

 このあたりから、どことなくKさんの表情が和らいだような感覚を覚えた。手を頭に当てる仕草、目の開き、口の緩みからそのように感じた。以降は旦那さんとの出会いについて話題が変わり、Kさんの語りぶりも、表情も豊かになっていった。

 どのような体の姿勢かで、語りたいことや語りの調子が変わってくる。今回のWSではAさんも「尻が痛い」とふと口ずさんでもいて、「座る」姿勢のことを考えていた。「座る」姿勢は自分自身、体の変化とともに、さまざまな模索や変化を経験してきた。

 「座る」姿勢の変化で何が変わるかというと例えばこんな具合だ。座面のクッションを変えることによって、床と私、ものと私、人と私という距離、すなわち視点が変わる。あるいは腰の落ち着きや、首の安定とそこに関わる呼吸が、腰の安定による手先の振り幅が変わる。これらの「変わる」は思った以上に大きく、やや大げさに聞こえるかもしれないが、身体に対する人や光景、世界の迫り方が変わってくるような気がする。

 こんなことを考えながら、WSを見学していた。

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