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20220922ワークショップ①砂連尾

開催日時:2022年9月22日 10:00~11:30
場所:グレイスヴィルまいづる-東京(Zoomオンライン)
内容:
2人の参加者とそれぞれ砂連尾さんが1対1でワーク
1.KTさんと1対1で20分程度
2.Kさんと1対1で20分程度

***
砂連尾理(ダンサー・振付師)

 普段のとつとつダンスワークショップは昼過ぎの13時半頃からスタートしますが、この日は私の都合で午前10時スタートで行いました。先月初参加で、その時は画面越しの私を動作を見るなり「殺される〜!」と言っていたKTさんが今回も参加してくれました。

 耳が遠いKTさんとのワークは私が言っていることを、生きがい支援員の浦岡さんが手持ちのホワイトボードに書いてのやり取りで進められていきました。例えば、その日も、私が「私はダンスをやっています」と言った後、浦岡さんがその言葉をホワイトボードに書き、それをKTさんが読むといった具合で健聴者同士の会話と比べると随分のんびりしています。

 私の声掛けからKTさんの「ほーっ」と返事が返ってくるまでの時間は約10秒。そんなやり取りだったため、この日のワークはいつもに比べ随分と沈黙した時間が多くなりました。ただ、それは決して気まずい沈黙ではなく、言葉が丁寧に運ばれていきながらの柔らかな時間がそこには流れていました

 先月は初参加ということもあり、少し落ち着かなかったKTさんでしたが、この日はとても穏やかな雰囲気でワークに取り組んでくれました(こちらからはそう見めました)。ワーク終盤、浦岡さんの演奏に私が即興で動いたのに合わせてKTさんも一緒に動いてくれたのですが、それ以降、KTさんの動きと動きの間に時折、目を瞑っては軽く首を振る動作が何度か見受けられました。

 午前中だったこともあり、もしかしたらKTさんはまだ眠かったため、うつらうつらとしていたのかもしれませんが、その動きは歌手のスティービー・ワンダーやピアニストの辻井伸行さんといった全盲の方が歌っている時や演奏されている時に見受けられるものとよく似ていました。全盲の方は視覚以外の感覚が発達して、首や頭を振ることで周りの情報をキャッチしている、また得ようとしていると言われています。

 視力はそれほど問題なさそうなKTさんですが、耳が遠くなったことで感じにくくなった世界、また彼女の側で演奏している浦岡さんの音楽を首を振っては何かを感じようとしてのでしょうか。単に睡魔に襲われていただけで、それを振り払うための首振りだったのかもしれませんが、私にはその時のKTさんの首振りが周りの世界への柔らかな接触、また彼女自身の内なる世界をじっくり観察しているようにも感じられ、その動きはまるでダンスのようでした。

 5分近く行ったKTさんとの即興セッションを終え、私は彼女に「今のご気分はどんな気分ですか?」と質問したところ、(言葉が届くまでの)約10秒の沈黙の後、彼女は画面越しの私の顔を見ながら何度も何度も頷いてくれました。

 その顔はとても穏やかで、最後に「また良かったら来月お会いしましょう」との呼びかけに、車椅子に座っている上半身をカメラに近づけては深くお辞儀をし、再び頷きながら最後は優しく手を振って自分の部屋へ帰っていきました。

 「首振り」「頷き」。この日のKTさんの首周りの動きから、そこには色々な意味と可能性があるのだなと感じました


 

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