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20221124ワークショップ①砂連尾

開催日時:2022年11月24日 10:00~12:00
場所:グレイスヴィルまいづる-東京(Zoomオンライン)
内容:
2人の参加者とそれぞれ砂連尾さんが1対1でワーク
1.Mさんが3分くらいで「協力できんわ」といって去る
2.Kさんと1対1で20分程度
3.KDさんと1対1で20分程度

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砂連尾理(ダンサー・振付師)

 とつとつダンスワークショップがオンラインになって良かったことのひとつは、入居者の方と画面越しで1対1で体を動かし合うことができるようになったことに加え、ゆっくりとお話ができるようになったことです。むしろ、最近では動くことに興味を示さない入居者もお話をすることには積極的な方が多いです。

 この日、参加してくれたKDさんもワーク中に動くことは少なかったですが、ご家族やご兄弟のお話は熱心に語りかけてくれました。

 大家族で育ったこと、お父さんのことを“おとっちゃん”と呼んでいたこと、おじいさんやおばあさんと一緒に暮らしていたこと。また兄弟の中で一番上のお兄さんが福知山の連隊に配属され、その後、フィリピンのバタン半島で、二十歳ちょっとで戦死されたことや舞鶴中学校を卒業されたことなど、お兄さんにまつわるお話をたくさん聞かせてもらいました。

 お兄さんのお話をされている流れで兄妹の話に移り、お兄さんの下にお姉さんお二人、そしてKDさんはその次の四番目で、彼女の下には弟と妹がおられることが分かりました。

 「6人兄弟ですか」と尋ねたら、「えっと、いっぱいおって」と答えられたKDさんは、一番の上のお兄さんから兄妹を指で数えながら順番に呼び始めます

 「お兄さん、二人のお姉さん、KDさん、弟さん」とそれぞれの名前を言われるのですが、もう一つ下の妹さんの名前がなかなか出てきません。空を眺めながら「私の兄妹、大勢あるんです」と、再び一番上のお兄さんの名前から指折り数えながら呼び始めます。

 今度は先ほど思い出せなかった6番目の妹さんの名前が出てきました。「その下には兄弟いませんか?」と聞くと、何ともう一人弟さんがいたことが判明しました。「その方が一番下の方だから、7人兄弟ですね?」と確認すると、KDさんは頷き、再び一番の上のお兄さんの名前から兄妹一人一人の名前を読み上げていきました。

 今回は1番目からご自身の4番目までの名前の順序はそれまでと変わらず読み上げられたのですが、KDさん以下の名前がその前に読み上げていた順序とは入れ替わっていました。

 一番下の弟さんが5番目になったかと思うと、6番目と思っていた妹さんが5番目になったり。混乱した私は改めて兄妹のお名前を確認すると、KDさんは 「大勢の兄妹ですね〜」と微笑みながら、またまた一番上のお兄さんの名前から言い始めます。そうするとKDさん以下の兄弟の順序がきちんと元の順番に戻ったり。

 KDさんの一つ下の弟さんのお話がはじまりしばらくすると、「兄妹大勢いるから」と、またまたまた1番目のお兄さんからの読み上げが始まる。この日のKDさんはその後も兄妹のお話をずっと繰り返し語り続け、数えてみると兄妹の名前も10回近く呼び上げてくれていました。

 呼び上げ中、KDさんの下の弟さん、妹さんの順番は時に変動していきます。そのことを確認しているうちに、KDさんのご家族について詳しく聞くことができました。KDさんの兄妹の順番の言い間違い?言い直し?の反復は、変奏曲のように展開し、次は一体どうズレるのだろうかというワクワク感を私に抱かせ、まるでジャズを聴いているかのような心地よさがありました。

 KDさんの兄妹の名前と順番をすっかり覚えてしまった私は、ワークの最後に私の方から7人のお名前を読み上げたところ、KDさんは一人一人の名前を聞くたびに指を一本ずつ折っては頷き、7番目の弟さんの名前を言い終わったところで両手を大きく叩いて拍手し「よう覚えてもうとるわ、私より!」と言って深々とお辞儀してくれました。

 KDさんから兄妹の名前を教えてもらっていたはずが、最後には何だか私の方が彼女に教えている立場に変わっていて、もはや<教えるー教えられる>という関係を越えて、その日は「兄妹の名前を上から順番通り言うゲーム」のような、そんな<ごっこ遊び>をいつのまにかKDさんと一緒になって楽しんでいたのかもしれません。

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