映画『関心領域』感想

 先日、シネ・ギャラリーで『関心領域』を見た。やっと見れた。

 映画の最中、ずっと不穏で落ち着かなかったので、退屈はしていないが辛かった。Xで見かけた映画評の中で「退屈と感じる人もいるようだが、大量に人が死んでいるのに退屈と感じたなら、それはそれでいやなメタ体験」というものがあり、いずれにせよ嫌でつらい体験をする映画なのか。

 ルドルフ・ヘスとヘートヴィヒ・ヘスのような関係と性格の夫婦、そこそこいそうだなあ。
 自分たち家族が豊かになることが全てで、他者の痛みに関心を持たない人たち。でもその歪みが無意識のうちに出ている者もいる。夫の体調不良とか子供たちの不眠症とか。

 彼らと対照的な人間として出てくるのが、夜中にやってきて、囚人たちの作業現場にこっそりりんごを置いていく少女。家族もまた対照的に描かれていると思った。彼女が夜道を自転車でこっそり帰っていくと、家族が家の中で小さな明かりをつけて待っている。カーテンを閉めているが窓を開けているのは、多分、娘を案じ、外の異変にすぐに気がつくようにするためだと思った。正義の行動を取る少女が善性の持ち主である家族の元にいる。
 彼らの人間性が光って見えた。

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