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ただ、やれる限りの精いっぱいで向き合っていこう~仲良しさんクラスプロローグ(5)~

「仲良しさんクラス1組。ととろん先生。」

そう紹介されて子ども達の前に立つと、

あんちゃんが「やったぁ!」と真っ先に言ってくれた。

緊張した顔をしているのは、まなさん、かずくん。

なんで?とちょっと困惑気味な表情は、はやくん。

だれ?という感じなのは、そうくん・あまくん・かいくん。

今日欠席の、こうくんはまだ会えないままだけど、

7人と無事対面できた状態で、始業式を終える。

教室に戻ると、8人の机は、幅広な感覚で二人ずつの4列。

真ん中の教卓は少し背高の、小さめのもので、

黒板ではなくホワイトボードだった。

「改めて、ととろん先生です。一年間よろしくね。」

昨年度科学クラブにいたあんちゃんは、もう嬉しそうだけど、

はや君から質問されて、「すっごい楽しいけど、叱るときは怖いよ。」

と、率直なととろん先生評を紹介してくれていた。

はや君は「叱ると怖い。」というのを聞いて、ちょっと構えた感じだった。

最初にしっかりと、子ども達の一年間の見通しを明瞭にしておこう。

そう思った僕は、話を続けた。

「今年、なんでととろん先生なの?と思っている人もいるでしょう。だから、ごまかしたりせずにちゃんと話すよ。去年の3学期、K先生が病気でお休みになった後、みんなは不安になって、だいぶ落ち着かなかったよね。なので、この6年生の一年間は、みんなが不安にならずに、卒業まで過ごしていけるようにするために、先生が来ました。」

緊張した感じでじっと話を聞く子どもたち。

「あんちゃんがさっき話してくれた通り、先生は楽しいことも沢山してあげられますが、叱ると怖いです。」

子ども達の作る空気が少し張り詰めた気がした。

「なので、先生からは、初めに、みんなとどんな風にしてこの1年を過ごしていくか、どんなことは助けて伸ばしていくか、どんなことは叱るかをちゃんと話します。」

そして、プリントを配る。書いてあるのは

【守る・楽しむ・伸びる】のめあてと、

『やるときはやる・やることはやる・やれる限りはやる』の合言葉だ。

みんなに僕が伝えられることは、これだけしかないから、

一年間みんなも心の中に忘れないでほしい。

できない事は、できるようになるように、挑戦したくなるように、

一緒にやっていく、支える、工夫を考える。

でも、やれるのにやらないときは、がんばれ!という気持ちで、

厳しく言うときもあるから頑張っていこう。

子ども達は、真剣な気持ちを真剣に受け止めてくれた様子だった。

「でも先生、本当にできないときはできないって言っていいんだよね。」

あんちゃんが質問する。あゆ先生と一緒にこたえる。

「もちろんだよ。できない事は出来ないって言ってほしい。先生たちも気付かないときもあるだろうから。」

「大丈夫、できない事は先生たちも一緒にできるように、挑戦したくなるように考えるよ。」

そんなやり取りで、仲良しさんクラス1組全体が、

少しホッとした雰囲気になったところで、

「そしてもう一つ、みんなに話すことがあります。」

僕は、子ども達にとって一番大事な、あの話について切り出した。

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※筆者より

『ととろん学級思い出日誌』では、子ども達をアルファベット略称で表現してきていましたが、この【仲良しさんクラス1組】の話では、全員を愛称呼びしていた日々だったので、愛称に寄せた呼び名で表現させて頂きます。お許しください。



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