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夏空に元気一杯のPLAYBALL(3)
「ととろん先生、ほんとに来てくれたんですね。」
Yくんは駆け寄ってきて、そう言った。
「そりゃそうよ。行くよって約束したし。それに約束だからというより、応援するの楽しいじゃん。」
と、僕が答えると、にっこり笑って、
「ありがとう。じゃあいいとこ見せないと。」
と、わかりやすく張り切りポーズをとってくれた。
「Mさんのチームも近くにいる?」
「ああ、あっちの陰にシート引いてたからいると思います。連れていきましょうか?」
「あ、でも試合の前にいいのかね。直前に対戦相手のところに行くのは。」
「いいでしょ、戦争するわけでもあるまいし。試合なだけですから。」
と、気にかけることなくYくんが先導しだした。
だが、Mさんの所につく前に、Yくんのチームの子ども達に、
僕がロックオンされてしまった。
「ととろん先生来たー!」
と、下級生(と言っても4年生なのだけど)が走ってお父さんお母さんに伝えに行ったかと思えば、
周りは取り囲むように、
「先生、応援よろしくお願いします。」
「Yくん、本当に来てくれたね。すっげー。」
「先生、野球は好きなんですか?」
と、わいわい質問が飛んでくる。
子どもたちが喜んでくれているのを見ると、こちらもすごく嬉しくなってしまった。
なんでこんなに?と思うかもしれないが、昨今の学校の先生は、
基本的に、仕事以外では子ども達にあまり関わろうとしない。
これは批判的な指摘ではなく、むしろ時代に合わせての働き方の線引きとして、
まっとうな事だと、自分自身もその基本的な姿勢には異論はない。
でも、一方で、学校で日々一緒に過ごす中で、
僕は、受け持っている子ども達のことをもっと知りたいなという思いはおおきくなるし、
子どもたちは、先生と、今のクラスを好きだと感じてくれれば、
自分の頑張ってるところ、見に来てほしいな。という思いは当然出てくる。
それは子どもたちだけじゃなく、おうちの親御さんたちもそうだ。
先生は学校で仕事で関わってくださっているだけだからと、
親御さんたちは習い事やスポーツ少年団の活動に、先生を本気で呼んだりはしない。良識的に対応してくださる方ばかりだ。
だからこそ、先生は声をかけても来ないのが普通。そういう感じでとらえられているので、
僕が本当に来たことには、おうちの方もびっくりしていた様子だった。
「すみません、隅っこでお邪魔にならないように応援します。」
と、恐縮しながら親御さんたちに頭を下げると、
「いやいや、先生!スタンドにテント立てますんで中で一緒に応援してください。」
と、もうすごくウェルカムな感じで声をかけてくださった。
そして監督とは別に、子どもたちのお父さんたちもコーチとして指導に当たっているようで、
コーチのお父さんが、Yくんに「ほら、みんなであいさつせな。」
と声をかけると、ユニフォーム姿のYくん、キャプテンの1組のOくんに声をかけて、
Oくんが「集合!今日は応援に来てくださりありがとうございます!」
とはきはきと号令をかけると、ぱっと並んだ子ども達、
「ありがとうございます!」
恐縮した僕もすかさず反射的に
「こちらこそ、楽しみにしてきました!ありがとうございます!」
と挨拶を返すのだった。
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