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義務教育の義務は子どもの義務じゃないからこそ、伸ばす支援が大切だ(中)

「こんにちわ。仲良しさんクラス1組担任のととろんです。」

「同じく担任のあゆです。」

家庭訪問最終日、かいくんの家にやってきた。

相棒のあゆさんと一緒に家庭訪問である。

かいくんの家は、学校まで徒歩では来れるけれど、

本来の小学校区外からの通学になっていて、これは特別支援の学級では、

よくある事である。仲良しさんクラス1組でも、

校区外に家がある子は、4人。なので、あゆ先生の車に乗せてもらって、

一緒に家庭訪問も回っている。学校行事としての家庭訪問の日、

かいくんのお家はお父さんもおばあちゃんも一緒に立ち会っての、

訪問と懇談になった。この日もかいくんは学校に来ていない。

「私も一度は起こして、学校に行くよう声はかけているんです。」

と、おかあさん。

「だけど、弟たちも学校と幼稚園におくらなきゃいけないので、そのあともう来るまで出た後は、目が届かなくて、本当にすみません。」

お父さんも、少し申し訳なさそうに、

「僕は、早出と夜勤の仕事なので学校に行く時間には手をかけてやれないので、申し訳ないです。」

おばあちゃんはとお母さんにしっかりしなさいという感じで、

「弟を送るときに一緒に車に乗せるところまでやらんからこうなるんよ。」

とお説教のような感じになってしまった。なのでお母さんも、

「そんなこと言ったって、弟たちに手がかかっている間に、かいまで手を引っ張ってくるなんて、そんな余裕ないわ。」

「でもあんた、子ども達にちゃんと朝ご飯とかも作ってないでしょう。」

「私だってできる限りのことは頑張ってるんだから。」

お母さんとおばあちゃんの言い争いのようになってきたので、割って入る。

「ありがとうございます。状況はわかりましたから。おばあちゃんの言ってくださるように、かいくんを車で学校の近くまで送ってもらえて、それでそのまま学校に足が向くようなら、全然それはしてもらって構わないんです。ただ、お母さんが朝、弟君たちのことで手いっぱいなのも確かにそうですよね。それについてはかいくんはどう思っとるの?」

と、そんな家庭訪問に一緒に座って聞いているかいくんに、聞いてみる。

「俺も、まぁ学校の近くまで、送ってくれるんやったらいけると思う。」

「あんた、これまでも一緒に行くよ、下りておいでって言っても全然下りてこんから、時間が間に合わなくなってもう、出るしかなくなっちゃってるんじゃないか。なんなん、私が悪いみたいに。」

お母さんは、朝の状況でそうしたくてもできなかったことを訴える。

「かいくんは、お母さんの声かけの時に下りてこんのはなんでなん。」

「なんか朝まだ眠くてあんまり体を動かしたくない時間が長くなって。」

「だから、夜早く寝なさいって言ってるのに。先生、かいはゲームの時間も全然守らないで、夜明け前まで起きてたりしているんです。」

という、お母さん。おばあちゃんが詰める。

「それを知っててゲームを取り上げたり、やめさせたりしないからこうなってるんでしょうが。あんたも言うだけで何もしていないのよ。」

これは、本人のやる気をあげて行動につなげていくまでに、

だいぶ考えてやっていかないといけないなと覚悟が深まるのだった。

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