応援団は燃えて萌えて全力で(5)
「今日のお昼休みは、紅白選手の練習が運動場で、放送係の打ち合わせもすると言う事です。なので応援団は昼休みは体育館練習なので、それぞれの役割の人は、給食先に食べ始めて、慌てないように準備しておきなさいね。」
運動会の練習が本格始動して一週間、毎日2時間の学年練習で、
6年生は組体操の練習で砂まみれになりながら、毎日くたくたになるまで、
みんなよく頑張っている。今のところけがや熱中症での事故などもなく、
毎日のスケジュールが進んでいく。
そんな中で応援団は、毎日の朝練、昼休み練、放課後練と、
さらにぐったりしそうな毎日を、歯を食いしばるように取り組んでいる。
子ども達も当然疲れるが、担当の先生たちも当然一緒に疲れるわけで、
この時期はもう気力で、根性で乗り切るしかない。
運動会が終わると同時に、もうばたッと倒れるくらいに、
目まぐるし忙しさの中で、練習に臨んでいかねば。
だがそんな日々についにHくんが、弱音ハクモードになってしまった。
「もう毎日毎日応援団ばっかり休み時間もなくて、練習だって振り付け覚えても何度も繰り返して。組体操の練習だけでも限界なのに。もう無理。」
6の4の子達は、そんな弱音にも温かく、
「後1週間だから、Hくんがんばれ。」
「やる気がここまで続いてきたんだから、やれるって。」
「明日は休みだから、今週はあと一日と思って、ファイトファイト。」
声をかけられHくん、「いやだ、もう行きたくない。」と、
温かい言葉に甘えたくなったのか、そんな返しで、教室の隅に座り込んでしまった。
みんなががんばれー、がんばれー。と励ます中、厳しい言葉が飛んだ。
「自分でオーディションに立候補してまでやると決めたんだろう!弱音は口だけにして、体育館に行きなさい!」
当然声の主はととろん先生だ。応援団の担当でもある僕からみても、
Hくんはよく頑張っている。白組では副団長にもなっているし、
大きな旗を持って走り応援団のパフォーマンスを盛り上げる役目も、
全力で頑張っている。けれどだ、この段階ではない。
よく頑張ったと、応援団の子達を褒めるのは、まだここではない。
応援団は難しい。どうすれば100点満点、というものはない。
本番には練習で限界まで頑張ったパフォーマンスで、応援を盛り上げるが、
団長は喉が枯れ、それでも必死に声を絞り出して応援合戦に臨む、
団員もほかの子達より何倍も砂ぼこりに汚れて、
そんな中で精いっぱい応援する。
だから、カッコいい。赤組の、白組の、みんなが頑張れる気持ちになる。
そんな応援団が一番やり切った気持ちになれるその時まで、
「よく頑張ったね、立派だったよ。」
の言葉は、たとえ心の中で毎日そう感じていたとしても、
ぐっとこらえねばならない。それが、子ども達の自信につながるのだから。
心を鬼コーチモードにして、僕はHくんに声をかける。
H君は動けるだろうか。
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