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途中の始まりは貴重な一期一会(4)

「今日から担任としてみんなと向き合うから、しっかりと言っておきたい。

先生は『やるときはやる』をみんなにも自分にも徹底していきます。

遊ぶときは遊ぶ、学ぶときは学ぶ、休む時は休む、食べるときは食べる。

なので、全員でそれをするときに、それをしないことはしっかり叱りますし

事情が分かればできる方法を考えます。

先生も、叱るときは叱るし、褒めるときは褒める、をします。

とことんやります。みんなは今日まで先生たちの言う事に、

やってられるかと思うこともあったかもしれないけど、

今日からはそんなことも含めて全部、あなたたちに言葉を投げかけるのは、

ととろん先生だけです。

だから、何か先生の言う事で、おかしいなと思うことがある時は、

その場で先生に返してください。

しっかり向き合って卒業まで過ごしていきましょう。」

そんな所信表明演説みたいな話を、子ども達はじっと聞いている。

36人それぞれに、思うことはあったのだろう。

通常であれば、

「あなたたちの命は先生の命よりも大事だから。」

「守る・伸びる・楽しむ、でやっていこう」

出会えた気持ちは、期限付きの片思いで、

子ども達と一緒にスタートを切るのが、僕のクラスの始まり方だ。

無論、今日その場から、僕の内心は6の1の子達にも変わらずに

おなじ想いで向き合っていたいと思っている。

けれども。4月からの約4か月で、6の1の子たちは、

あるいは騒がしくする側で、あるいはそれに耐える側で、

あるいはもうこの一年をあきらめた気分で、

誰も私たちの辛さに見向きもしてくれないのだという思いで、

不安に覆われている。

スタートラインから一緒に走ってきたわけではない、

この太った声の大きなトトロのようなおじさんに、

ますます不安を募らせているに違いない。

だからこそ、僕も覚悟を決める。

最後まで、絶対に、とことん向き合い続けていく。

そして、この子たちに、必ず笑顔で卒業を迎えてもらうのだと。

そして、この途中の始まりという通常とは違う出会い方こそ、

何年たっても僕の心に残り続ける、

かけがえのない一期一会の時間に、なっていくのだった。


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