見出し画像

夏空に元気一杯のPLAYBALL(11・了)

順調に2日目も勝ち抜いたYくんたちのチームは、

いよいよ最終日、準決勝戦に駒を進めた。

トーナメントは一回負けると終わりなので、

どこで足をすくわれるかもわからない中、

二日間勝ち抜いてきたチームの安定した強さは、

応援していても楽しい。すっかり野球の応援が楽しくなった僕は、

最終日も応援に行こうと決めた。

「明日の準決勝戦と決勝戦は、別の球場なんですよ。」

尋ねると、ここの野球場とはまた全然違うところにある球場だった。

だが、この夏の大会は、市長杯と銘打っているだけあって、

会場は同じ市内の別の場所のようで、

それならば行ける!と、僕はYくんとチームの子どもたち、

そして、お父さんお母さんたちに、

「明日も応援来させてもらいます。」

と、言って野球場を後にした。

この日は隣のクラスのⅠ先生も一緒に応援していたので、

帰り道はI先生の車で、最寄りの駅まで乗っけてもらった。

途中、応援で暑かった体に涼をとるために寄った洋菓子屋さんで、

巨大パフェに挑戦したのも、楽しかった。

そして、3日目最終日。

本格的なスタジアムといった感じの野球場は、確かに昨日までの野球場よりもまた一つグレードアップしていて、

電光掲示板でのスコアボードには、甲子園の中継で見るのと同じ感じで、

こどもたちの名前も掲示されている。

これは、こんな球場で試合ができるだけでもワクワクするだろうな。

それは選手である子ども達だけでなく、応援する側も同じだった。

すっかり、しっかりおぼえたYくんのチームの子どもたちの名前が、

読み上げられながら点灯していく。これだけでなんだかドキドキしてくる。

そして準決勝戦。相手は、昨日までの球場では見なかったチームで、

シーソーゲームの展開が続く。7回まで終了して同点のままだった。

初めてみる少年野球の延長戦、何回までするのかなと思って見ていると、

何とノーアウト1塁2塁の状態から始まるタイブレーク方式だった。

タイブレーク方式を初めて観戦した僕は、

なるほど、こうすれば、決着が長引かないって工夫なんだなと納得しながらも、

これは、スタートからだいぶピンチの状態で始めなきゃいけないから、

プレッシャーも半端ないなと見ているこちらの緊張感もぐんと上がった。

そんなタイブレークの延長戦を何とかしのいで勝ち上がり、

決勝戦、こちらは昨日も同じ球場で見かけたチームが勝ちあがってきていた。

相手のチームも、安定感が抜群で、ピッチャーもだいぶ速い球を投げていた。

さぁどうなるか…と思って、大きな声を出して応援したが、

やはり、準決勝で延長戦まで戦って疲れた分、

こちらのチームのスタミナはだいぶ消耗していたようで、

惜しくもYくんたちの夏の大会は、準優勝で終わったのだった。

試合が終わり、スタンド裏で最後のミーティング。

好々爺の監督さんは、よく頑張った、まずはしっかり体を休めなさい。

と、ねぎらいの言葉をかけている。

ミーティングが終わると、子ども達は悔し涙を裾でさっと拭いて、

キャプテンのOくんの号令でこちらにかけてきて整列した。

「ととろん先生、三日間も応援に来てくれて、ありがとうございました!」

「ありがとうございました!」

何でよ、ありがとうはこっちの方だよ。

こちらが泣いても示しがつかないので、僕は子どもたちがいつも見ている笑顔の表情を作りながら、

「こちらこそ、ありがとうございました。みんなの応援ができて、とっても大事な夏休みの思い出ができました。」

と返事をする。そして僕は、また、大会があったら応援させてもらおうという気持ちになっていた。

スタンドの作る陰には、涼やかな風が吹き込んでくる。

夏空に響いた少年球児たちの熱戦の音は、いつまでも心になり続けるのだった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?