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言うは易し、行うは?(大いに討論できたなら・後日話)

「・・・というのが、水溶液の性質として分けられるんだね。」

理科の授業、今日は教室での学習で、実験のまとめの時間だった。

子どもたちは、実験の結果を確認しながら、酸性、アルカリ性について、

板書をノートに写したり、実験したリトマス紙を貼り直したりして、

学習のまとめを行っている時間だった。

「あら、Yくん。授業に集中しないと駄目よ。」

と、突然後ろから聞こえてきたのは校長先生の声。

僕も子どもたちも、ぱっと廊下側の一番後ろの隅っこの席のYくんに目を向けた。

「は、はい!すみません!」

と威勢のいい声で謝ったYくんだったが、何をしていたかというのがみんなにすぐばれてしまう。

「あ!Yくん、学級文庫の本読んでたん?!」

「しかも、それマンガやない?みんなでルール決めたの一週間前だよ。」

そう、先日の学級討論会の結果、6の4でも最近解放されたばかりの、

学級文庫のマンガを、Yくんは机の下で開いて、コソコソ読んでいたのだった。

「これ、没収案件やん。」

「もう~!何してくれてんのよ!」

と、みんなは非難轟轟だ。

というのも、その学級文庫に、蔵書の中のマンガ本を開放するにあたり、

子どもたちと僕でルール決めをしていたからだ。

そのベースになったのは、学級討論会の意見で出たもので、

・取り合って喧嘩をしないこと、順番を何人かでちゃんと確認

・休み時間以外は棚に戻して、授業中などに読まないこと

・家に借りて帰る場合は、先生に借りて帰る旨言って借りること。返却は原則一日で(土日がある場合はまたいでよし)

といった内容だった。

そのルール決めの話し合いで、一番いいことを発言して、

みんなの納得する学級文庫の決まりの改定に知恵を出してくれたのは、

ほかならぬYくんだったのだ。

「Y、お前みんなにはちゃんと守れよ!とかすげー偉そうに言ってたのに、お前よぉ!」

「なんなの、もう。どうしてくれるのよ。私まだ途中までしか読んでいないで楽しみにしていたのもあるのに。」

みんなの非難がなかなかやまないのには理由があって、

ルールを守れない者が一人でも出た場合は、学級文庫のマンガ本は再び封印します。

と、ルール決めの際に、罰則事項が告知されていたからだった。

「いや、言うは易く行うは難しとはこのことだな。。。。みんなごめん!ととろん先生、ルールを破ったのは僕なので僕だけペナルティで。」

と、出前のように注文してきた。てへっと笑ってすますもんかと、

僕はドカンと雷を落とした。

「んんんなわけあるかぁ!今から全部封印じゃあ!!!」

こうして、せっかくの学級討論会の成果だった、

学級文庫にととろん文庫のマンガたち解放は、

一週間でいったん封印となったのだった。

「いやぁ、ついなぁ、近いとなぁ。」

いつもはムードメーカーで、リーダー的存在のYくんだが、

この時ばかりは、みんなの視線がだいぶ痛かったようだった。

※その2週間後に、もう決まりは破らないということを再度確認して、再び学級文庫のマンガは解放されました。

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