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喧嘩も最後までとことん(1)

「じゃあ、もう全部自分で考えて自分でやっていけるってことなんやね!」

「できるし、全部自分でやって行けるし!」

「じゃあわかった。あんちゃんの席はここのクラスにあるから、それはこの一年動かせないので、ここに来るのは構わないけど、先生はもうなんも教えんから自分でやり!」

・・・と、そんな大げんかがいきなり発生してしまった秋の放課後。

発端は、6時間目のクラブ活動が終わった後のことだった。

「今日も楽しくクラブ活動してきたかい?」

科学クラブの活動を終えて教室に戻ってみると、

先に帰ってきていたパソコンクラブのあんちゃん、かずくん、あまくんが、

帰りの用意をしておしゃべりして待っていた。

「楽しくできました。」「今日も面白かった。」

とあまくんとかずくんが活動してきた感想をつたえてくれたが、

あんちゃんだけは口ごもっている。

「あんちゃんはどうだったん?」

と、あんちゃんに尋ねるも「いやー、楽しかったです。」

と歯切れが悪い。ちょうどその時に、パソコンクラブの担当になっている、

仲良しさんクラス2組のS先生が様子を見ていて、入ってこられた。

「いや、ととろん先生。今日はあんちゃんはですね、ちょっとクラブ活動の時の態度が良くなかったんですよ。」

聞けば、あんちゃん、その日の午前中にクラスのパソコンの授業でやった、

プログラミングのゲームを、クラブ活動の時間にも勝手にやっていて、

今日のクラブ活動でみんながしていたものは全くしなかったのだという。

「それはダメやね。いくら楽しかったからと言ってパソコンを好き勝手に使っていい時間じゃないやろ、クラブの時間は。」

すると、その時のことを思い出したように、あまくんが話し出した。

「そういえばあんちゃん、注意されたときS先生に、うるさい!とか言って反抗していたね。」

あんちゃんは(バカ!いうなよ!)とそんな感じであまくんを見るが、

あんまり人の目を気にしないあまくんは気付かないままに、続けていく。

「S先生も、今日のことはととろん先生にもちゃんと話すからね。副部長なのにね。って言ってたよね。」

「あんちゃん、副部長なのにそんな勝手はだめだろ。」

と、少し厳しめの口調であんちゃんに言葉をかける。

だが今日のあんちゃんはどうも、虫の居所が落ち着かないらしく、

「俺はちゃんとクラブで作る作品も作りました!」

と、弁明してきた。しかし・・・S先生にかくにんすると、

「しあげては、ないよね。ひとりだけ。」

とすぐに返ってくる。

「いや、あんちゃん、今日クラブに行きたくないっていうのなら、その時はここの教室で過ごしていいのがこのクラスやろ。その上で今日はあんちゃんは、クラブ活動に行くと決めていったわけよ。じゃあ、副部長でもあるんだから、やることはちゃんとやってこんとやん。違うかい。」

僕に言われていることは、全く持って反論できないところなので、

あんちゃんは「うー。」とうなってしまった。

「先生の話を聞かずに自分で何でもやれますっていう態度なんやったらさ、そしたらもう先生も教科書もいらんやん。自分でやればいいやん。」

と畳みかけると、あんちゃんは対抗して、

「できるし!俺もう何でも一人でできるし!」

こうして、あんちゃんと僕の大げんかは火ぶたを切ってしまったのだった。

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