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ただ、やれる限りの精いっぱいで向き合っていこう~仲良しさんクラスプロローグ(6)~

「なんですか?大事な話。」

「うん、仲良しさんクラスには、交流があるよね。そのことです。」

ほっとしていた空気が一気に張り詰めて、

そして子ども達は想いを口に出し始めた。

「交流は行きたくない!」

「あいつら俺らのにいつも嫌な事ばかり言ってくるから。」

「毎日毎日あの45分を耐えなきゃいけないのだけは無理!もう無理!」

あんちゃんや、はや君がこれまでの経験から培った不満を素直に吐露する。

かい君やそう君も、強く首を縦に振り、頷きながら、

「俺もいつも変な質問ばかり繰り返しされるんよね。」

「僕も、いつも話かけても無視されます。」

と、自分で体験した出来事を、つぶやきながら話してくれる。

収集つかなくなりそうなほどにヒートアップしている子ども達の様子に、

(本当にこれはもうとんでもないストレスだったのだな・・・)

と、少し愕然としながらも、

「なので、ちょっと聞いて。ちょっと続きを聞いて。」

興奮を何とか抑え、子ども達が席について耳を傾けてくれたのを見て、

僕は続けた。

「なので、みんながこれ明け交流が辛い状況で6年生まで来てしまっているのを、ととろん先生はあゆ先生からちゃんと聞いていたので。あゆ先生と話をして決めました。今年の仲良しさんクラス1組の授業は、全員で、全部このクラスでします。」

子ども達は、これまでの5年間でそんなことは一度もなかったので、

一瞬、何を言っているのか判断がつかないような顔になった。

驚きの気持ちを隠せないままに、あんちゃんが質問してくる。

「え、本当に?そんなの本当にいいの?ですか?」

驚いて丁寧語もおしゃべり口調も混ざってしまっている。

「いいようにしました。というのも、うちのクラスは全員6年生で8人のクラスでしょ。だから、授業で教えることが、個別に違うものでもない。そして、ととろん先生は去年6年生の先生だったから、みんなに教える授業は全部教えられます。なので、今年は授業は全部、仲良しさんクラス1組は仲良しさんクラス1組だけでやっていくように話を付けました。」

説明をしっかり聞いて、子ども達には安どと喜びの笑顔が爆発した。

「やったぁ!」

「これならしっかり勉強できると思う!」

「俺も学校に来るのが嫌じゃなくなったかもしれない。」

口々に喜びを言葉にするこどもたち。

緊張しながらじっと話を聞いていた、かずくん・まなさん・あまくんは、

「いよっしゃぁ!」と握りこぶしで雄たけびのような声のまなさん、

「やったぁ、やったぁ」と小躍りするあまくん、

にこっと笑って「よかったぁ。」とほっとした表情のかずくん、

みんな、相当に交流はきつかったのが伝わった。

「ただ、全く0は無理だったので、週に2回の給食だけは、交流に行くことにはなります。申し訳ない。だけどみんなだけ行かせてほったらかすことはしないから、ととろん先生とあゆ先生が、給食の交流のときには一緒に交流学級まで行って、一緒に給食を食べるから。そして交流の日の給食もどうしても無理な時は、ここで食べていいから。どうだろう。」

全部は無理なのかと眉間にしわを寄せながらも、

「わかった、それくらいなら僕は頑張ってみる。」と、はやくん。

「給食だけで、先生たちもついてきてくれるなら全然いいよ。」と、

笑顔で答えてくれた、あんちゃん。

「俺は給食も、無理かもしれん。」と不安そうなかいくんには、

そんなはや君や、あんちゃんが励ましてくれている。

「一人じゃないし、無理ならここで食べたらいいんやけん。」

同じ苦しみを共有してきた子ども達の絆は強い。

「学年全体の行事などは、運動会は全体に入ると思うけど、それ以外は、仲良しさんクラス1組で1グループでやれるように、その都度先生たちで話し合っていくので、みんながより楽しく伸びれるように、みんなで頑張っていきましょう。」

子ども達の顔を、初日から晴れやかな笑顔にしてあげることができて、

俄然やる気が出てきた、出会いの日になったのだった。



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