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クラス全員で節分鬼祭り (11・了)

一度成功例を経験すると、自信もついてくるし、コツもつかんでくる。

その雰囲気はどの役の子達からも等しく伝わってきた。

クラスを経る毎に、鬼役の6人は、

一年生へのちょうどよい加減の鬼の迫り方。

視界を確認する余裕をもって動く、立ち回り方がうまくなっていく。

セコンド役は、鬼が入っている間に、インターバルの準備も、

自分たちで指示し合って、確認し合って、整えていく。

タイムキーパーとお知らせ役は、緊張感を維持しながらも、

インターバルの状況、前のクラス片付き具合などにも目を配りながら、

正確なだけでなく、みんなが動き易い幅でのお知らせの仕方ができていく。

鬼が来たぞー!役の子たちは、次の6時間目の、2年生での出番で、

どんな風によりよく演技していこうかを考えているようだった。

一年生のお世話と片付け係チームの子たちは、

初めからてきぱきさと温かさを備えていたが、

自分たちの時間の指示は、各クラスの担任の先生に

聞いた方が良いことに気付き、段取りがどんどんうまくなっていく。

補欠役の二人は6時間目の出番まで、廊下でみんなと盛り上がりながらも、

中の鬼の動きをじっくり観察している真剣な姿が見て取れた。

どの子も自分の役割が、このイベントを楽しいものにしているという、

たしかな感触を感じているようだった。

だからなおさら、次はより良いものにしてやるぞ。

まだチャンスは6時間目まで何回もあるから。という向上心も感じられた。

そして6時間目、二年生も大賑わいで大泣きで。

でも一年生より一間あり大きくなった体と勇気で、

立ち向かってくる子も増えてきて、大変さも増す中で、

補欠の二人も順次入れ替わり、最後まで鬼祭りをやり切った。

6の1の教室に戻ると、子ども達の興奮は収拾がつかないほどで、

「ととろん先生、うちらも豆まきしたい!。」

と言い出したので、じゃあと、新聞をちぎって即席の豆を作り、

鬼役は僕がやるからみんな、思いっきりぶつけるがよいよと、

言い終わる前に、もう教室の隅に立っている僕に、バシバシと。

子ども達は新聞豆をぶつけてくる。

「痛い、痛い、参った!」

「まだ太鼓なってないからダメ!」

笑い声の中で終幕したクラス全員での節分鬼祭りは、

間違いなく大成功だった。

・・・・・・・・・・

放課後、一二年生の先生方からも、すごくお礼を言われる。

「本当に楽しかった。子ども達も真剣に怖がってた子もいれば楽しそうに逃げ回っていた子もいて。」

「来てもらうまで、鬼なんて誰か先生がやってるんでしょ。って言ってた○○ちゃんなんかもう、こっちも想像できないほどの泣き方だったよ。」

「片付けの時に、Mちゃんが一年生のことずっと抱っこしながら掃除してくれていて。ととろん先生からその子とも褒めてあげて。」

など、6の1の子たちの良かった所も、皆さんしっかり見て下さっていて、

こちらで大ごとにしたイベントなのに、ありがたいなと感じ、

改めてお礼を伝え、必ず6の1の子たちに伝えますと答えた。

当然のことながら、その日の6の1の宿題は、

【鬼祭り大成功のため、宿題はゆっくりと疲れを癒すこと。】

にして、子ども達は週末の宿題無しに、もうひと喜びしていた。

そして昨日までより、より強く自分の心の中に感じられたのが、、

6の1の子たちのすごさに対しての、感服した思いだった。

鬼祭りが盛り上がる中、子ども達が嬉々として役に向き合いながら

このイベントを全員で満喫している姿に触れて、

一団で同じ目標をもって誰かのために全力を尽くすことを、

自分の楽しみとしてできているこの子たちのよさ、

それぞれの役割を、お互いに褒めて認め合い、協力が自然にできる、

この子たちの6年間一緒に過ごす中で、

今ここに至るまで積み上げてきた仲の深さ。

人は、こんなにもひたむきに前向きに、何かにみんなで打ち込むことを、

楽しみながらすることができるのだということに、

ただただ、子ども達への尊敬の念が湧いてくる。

卒業までのあとひと月半、もっともっと思い出になることを

僕自身ができる限りのことを、やってあげれるように頑張ろう。

改めて、自分の中にも、前向きな想いを感じるのだった。


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