大いに討論できたなら(3)
「・・・と、質問が出ました。賛成グループさん、どうですか?」
「はい、確かにマンガがあると、そっちに気を取られる人が多くなることは考えられます。だから、そういうときのために・・・。」
「いや、その決めたルールを守らない人だって出てくることも考えないと。そうなるとやっぱり初めから無い方が、そういった心配もなくなると思うんだけどな。」
準備に時間をかけた分、学級討論会は盛り上がっている。
・・・・と思いきや、実はこれ第2回目の討論会。
しかも同じテーマで行っているのだ。では1回目はどうなったか、
しっかり準備ができたと思っていた子ども達。
だが始まってみると思っていたようにはいかなかった。
お互いの意見を出し合った後に、質問を誰に指名すればいいのか、
沢山手が上がる中で躊躇してしまった司会グループ。
それによって質問とはちぐはぐな返答になってしまい、
進行していく話をよく聞いて理解できている子と、
今なんの話だっけ?と混乱してしまう子が同じグループの中で混在し、
どんどん話が、本題からずれていってしまったのだ。
当然、審判視聴者グループからは、手厳しい指摘が飛び、
討論グループ、司会グループ共にしゅんとなってしまった第一回。
終わった直後に、「もう一回、同じテーマでやらせてください。」
と、同テーマでの討論会アンコールリクエストをしてきたのだった。
では、まず先生からの寸評で、と前置きして話しはじめる。
「うん、確かに、どんどん収拾がつかなくなっていってたね。ただ、先生は、これはこれで面白かったしなるほどなぁと感心してしまったよ。まず、収拾がつかなくなっていってるのに、司会グループさんが打つ手がなくて修正しようと思ってもできなかったところ。あれはこれから司会をする人たちにもすごく勉強になったと思う。どこまでは討論が盛り上がっても大丈夫かを、あらかじめ予測して、進行していかないといけないっていう事が司会グループでは大切だということがわかったからね。討論グループは、やっぱり話すのが上手い子だけのやり取りの応酬に最後はなってしまったけど、グループの中には、他にも自分の意見を言いたい子がいたんじゃないかなって伝わってきた。その辺りの協力体制がもっとあったら全員で盛り上がれたよね。で、先生が今話したことを、ほとんど審判視聴者グループは見抜いていたのがすごいなと感じました。」
うんうん、と頷きながら耳を傾ける子どもたち。
「本当の討論会なら、一発勝負でおしまいだけど。ここでの討論会はみんなの力を伸ばす学習だから、みんながやりたいって気持ちが一番。そのリクエスト受けましょう。」
おっしゃぁ!と、異様に気合いの入った声があちこちから聞こえる。
自分から伸びようとする気持ちっていうのは、こんなに強い気持ちなのか。
驚いた気持ちで、子どもたちのリベンジ、第二回学級討論会は、
同じテーマで、メンバーは入れ替えてという条件で行うことになった。
改めてグループ分けが終わった後に、
やってきたのは司会グループの女子三人。
「先生、私たち、司会としても悔しかったので、この第二回じゃなくていいです。もう一回司会をするチャンスもください。」
子どものやる気は上がり始めると天井知らずなのだ。
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