クラス全員で節分鬼祭り(9)
カキーーーン、カキーン、カキーーン、
火の用心の時の甲高い乾いた拍子木の音が廊下で鳴る。
「お、お、鬼が来たぞー!!!」
ガラガラっと教室の前の扉を開けて、
鬼が来たぞー!役が飛び込んでいった。
と、同時にタイムキーパー役は確実にストップウォッチをスタートさせる。
6人の鬼役がどかどかと教室にはいっていった。
一年生の担任の先生は、こちらが鬼を全部引き受けているので、
一年生の様子を確認しながら、写真を撮りまくってくれる。
さぁ、6人の見せ所だ。時間は5分。
まるっと2週間練習してきた成果がしっかりと出せている。
一年生の身長より長い金棒も、空中でぐるぐる回したり、
一年生が逃げた後の床をたたいて、ケガがないように脅かしている。
視界が良く見える高身長のU君、K君、S君は、
逃げていく一年生の方向に、的確に迫って脅かしている。
爽やかイケメンのムードメーカーのI君は、固まって逃げる一年生に、
程よく距離を置いてゆっくりめに、距離を詰めて、
一年生が別の場所に逃げる時間があるように動いている。
下級生に優しいN君は、泣きだす一年生によしよししながら回り、
それに気づいた一年生が、あいつなら勝てると豆をぶつけてくると、
たじろぐ様子で頭を抱えて逃げ回る。
一番視界の狭いお面を付けたR君は、「どこどこ?」と言う感じで、
さまようように歩き回るので、一年生が「こっちだよ、こっち。」
と声をかけられながら、笑い声の中で持ち前の身体能力で
上手く迫っていっていた。
廊下では鬼役以外の子たちが、
「T君、迫力ありすぎだろ。」
「いけいけー!一年生がんばれー!」
「K君、もうガチ鬼やんw」
「R君、めちゃめちゃ遊ばれとる。」
「うわぁ、、、すげー散らかってるなぁ。」
「あの一年生、怖がりすぎてるけど大丈夫?」
などなど、窓越しのプレミアム席観戦で盛り上がっていた。
だが一番盛り上がってしまったのは、こともあろうに担任だった。
「あっちに逃げたぞー!青鬼いけー!」
「あの子がまだまだやる気だ、二人係で行っちゃえ!」
鬼の総監督のように、6人に指示を出しながら、
机の隙間に隠れていたら、鬼に抱き上げさせ、
しっかり豆を投げてきている子がいたら、参ったとたじろぐように伝え、
時間いっぱいノンストップで暴れ続ける。
ドン・ドン・ドン・ドン・
終わりのお知らせ係がタイムキーパーに伝えられて、
タンバリン太鼓を鳴らす。
盛り上がり鳴き声も重なって、音がなかなか届かない。
セコンドリーダーのRさんが
「ととろん、時間、時間!、終わりだよ!」
と扉を開けてくれてようやく太鼓の音が教室に入ってきて、
6人の鬼たちは、退散の演技までしっかりとやり切って退出する。
鬼の退出と同時に、担任の先生から
「盛り上げてくれてありがとう。次もあるだろうからあとはいいよ。」
と言葉をもらう前に、一年生のお世話&片付け係が、
泣いている子たちをよしよししながら、
散らかった床をてきぱき片付け始め、
一年生の先生は、その様子にまたうれしそうに「ありがとう。」
と、子ども達に声をかけてくれるのだった。
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