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途中の始まりは貴重な一期一会(2)

校長室に入ると、校長先生、教頭先生、教務の先生と、

管理職三役がそろい踏みで待ち構えていた。ちょっとたじろぎ、

「な、なんでしょうか・・・?」

と尋ねる。堅い雰囲気から、

なんかいい話ではないのだろうなと不安を感じるも、

何とか平静を装っていると、校長先生が話し始めた。

「実はね、もう見ていて知っていると思うけど今6の1の子達が、落ち着かない状況で。担任の先生も今週休まれているのだけれど。」

「はい、今週は僕がずっと入っていましたので。」

「本当にありがとう、でね、この3,4日子ども達とはどうでしたか?」

「そうですね、担任の先生がいつ戻られるかと心配になっている子もいましたし、相変わらず、隙あらば騒ぎたい感じのもいましたし、ただ、見ていて思ったのが、悪意のある妨害でなく、もうあれは集中力がまだ続かない感じにも見えました。どうにか落ち着くきっかけがあればいいのですが。」

「そう、よく見てくれてありがとう。それでね、実は、6の1の担任の先生が、今日病休申請を出されたのよ。」

「え!そうなんですか・・・。」

「そして、代替の先生の要請を委員会にはあげたのだけれど、年度途中でいないみたいで。でね、ととろん先生、このタイミングからで悪いのだけれど、6の1の担任を受けてくれないでしょうか。」

「ぼくですか?!」

管理職側には、僕が困惑で困っているように見えたかもしれない。

規模が大きめのこの学校には、僕以外にも、算数の少人数指導の先生や、

同じ立場の担任外の先生が、正規教員でいらっしゃった。

つまり順番で言うと、話が回ってくるのは正規の先生からで、

僕は、その後になるのが正当な順番なのだ。

これは順番違いでは?という思いで困惑しているのだろう。

と思われた校長先生が続けて話す。

「いや、○○先生と、△△先生にも、打診はしたのだけれど、それぞれご事情があって今年は担任ではない仕事を、と言う希望で、今働いているから、やはり難しいと言う事でね…。ととろん先生も、まさかこんな形で担任を途中からとかは困惑しているのだろうと思うのだけれど、職員全員でサポートして行くから・・・・どうでしょうか。」

落ち着かなくなった状況で途中から入る大変さに、申し訳なさそうで、

でも他にあてがないからお願いするしかない、

そんな雰囲気が伝わってくる。

だが僕は校長先生の言葉にかぶせるように

「ぜひ、やらせてください。」

とワクワクを必死に隠しながら、返事をしたのだった。

あまりに前のめりの返事に、

管理職の先生たちの方が慌ててフォローを入れる。

「もちろん途中からだから、6の1の子ども達にのみ集中してもらえたらと思っているから、今お願いしている他の仕事は、こちらで引き継ぐから。」

「後、いきなりととろん先生に全部お願いと言うわけでなくて、算数の授業は○○先生が授業をしてくださるようおねがいをしたので、算数の時間は、一休みできるようにしていくからね。」

「それと、トラブルなどが発生した時には、こちらも一緒に関わって一人で背負わせるようにはしないから。」

と、もう、気を遣っている言葉が次々と出てくる。

でも僕の心づもりは、「やった、今年も担任だ。」というものだったので、

そんなにを気を遣ってもらわなくても、と言う気持ちだった。


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