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歴史の魅力を楽しみ尽くそう(3)

「おはよー。これちょっと持ってくれる?」

7月の最初の火曜日、朝から大量の画用紙をもって教室に入る。

「おお?先生。これはもしや?もしやですか?」

「うん、できたよ。戦国時代の天下統一ゲーム。」

おおおお!と、取り巻いている子達から、歓声が上がる。

「なんかむらからくにへゲームのときと比べて、格段に材料の紙が多いんですけど。どんなゲームになるの!」

全開のむらからくにへゲームのことを覚えてくれている子からは、驚きの声が聞こえてくる。

それもそうだ、今回は最大8人対戦のゲームを5セット作ってきている。

しかも今回はボードとなる日本地図の拡大版もある。

画用紙は4つ切りを一締め500枚使い切った。

「じゃあとりあえず、今日はこれをみんなで切ってもらって準備、そして明日はいよいよゲームを、2時間通しでやる予定にしているからね。」

「任せて、先生。私じゃんじゃん切っちゃうから。」

とMさん、ニッコリ笑顔で張り切って腕まくりのポーズ。

「おれは、この武将カードのを切りたい。おおお、幸村あるじゃないか!」

とTくんは、どんな武将がいるのかがとっても気になっているようだ。

みんながわらわらと見に来てくれる中、とりあえず落ち着かせる。

「まぁ、ひとまずは朝の健康観察ね。それから、今日の社会は、一学期最後のテストだから、それも頑張ってね。」

と子どもたちに言うと、

「え、先生、これ作るならテストは延期の方がいいんじゃ・・・。」

「何言ってんの。やることを先に終わらせてから、心おきなくお楽しみでしょう。テストは信長から家康のとこまでのだから、みんな高得点でしょ。」

そう僕が言うと、うへぇ、とした顔でKくんがつぶやいた。

「このゲームした後だったら得意になってたかもしれんのにぃ。」

確かに、ゲームで色々な言葉に触れてからテストをしたほうが、

知識をもっと頭に入れられるかもしれない。

「Kくん、確かにそうかもしれん。みんなでゲームした後の方が、信長から家康までの内容がもっとわかる人が増えるかも。」

そんな反応にはすかさず乗ってくる、雰囲気に敏感な6の4の子どもたち。

「たしかにそう!Kくんいいこと言った!先生、せっかくこんなにがっつりゲーム作ってきたんだから、やってみてもっとみんなが歴史が得意になってからテストしてみるのはありだと思う。ね、みんな。」

Mさんがそいうと、周りのみんなもうんうん、と頷く。

「それは・・・只テスト勉強やってなかっただけじゃないん?」

と、ちょっと意地悪に問いかけると、

「いやいや、そんなことは無いけどね。うん、こんなに本格的なととろん先生のゲームで、もっと賢くなったら、いいんじゃないかなぁ。」

と、まだまだ食い下がってくる。

「・・・・分かった、じゃあ今日の信長から家康のテストはゲームをしたあとに延期しよう。やってみる価値はありそうだからね。」

やったぁ!と子どもたち。なんだか朝三暮四のような気もするが、

とにかくその日の社会科は、クラスのみんな総出でカードの切り分け作業の時間となったのだった。

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