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応援団は燃えて萌えて全力で(7)

二度目にして最後の全体練習が終わった。

今回の全体練習では、応援団の時間が30分もらえていて、

応援合戦の時、テントではどんな掛け声をだしてね、ということや、

競技の合間に応援団が出てきた時には、笛の合図に合わせて手拍子をとって

エイエイオーで盛り上げてね、など。

初めて運動会の一年生は言うまでもなく、他の子達も一年に一度の行事で

応援団にどう乗っかっていいかを伝えるためにも大事な時間だ。

本番までの練習期間も折り返した今週は、連日、朝と昼休み後の二度の応援合戦での動き方や、

団長同士のエールの交換などを、通しで何度も練習してきた。

応援合戦も一つの演目として、しっかりとプログラムに記載されているが、

応援団の活動だけは、競技ではないので、先生が指揮台に上がらない。

応援団長の掛け声に合わせて、子ども達だけでやり通す。

そういうところも、際立ってカッコいい。

そんな全体練習の時、既に赤白団長の声は擦れかかっていて、

それでも目一杯の声を張り上げて、応援合戦の言葉を響かせる。

「赤組のー!勝利を願ってー!フレーーーー!フレーーーー!あ・か・ぐ・み!!そーーーれっ!」

テントからの「フレ!フレ!赤組!フレ!フレ!赤組!」の声に、

一瞬ホッとした顔になる紅組団長さん。

「白組のー!優勝を願ってーー!フレーーーー!フレーーーー!し・ろ・ぐ・み!!そーれっ!」

こちらもテントからの大きな掛け声に、にこッと笑顔白組団長さん。

掛け声とエール交換の間、団員が中腰で天を仰ぐようにグッと背中をそらしているシルエットは、

美しいほどに微動だにせず力強く静止している。

そのピンと張りつめた緊張感が、テントの下級生にも伝播して、

応援合戦の静と動を、応援団の子ども達は見事に魅せてくれたのだった。

練習後の中休み。僕はようやく応援団鬼コーチモードから、

いつものととろん先生に戻って話をする。

「気付いてた?下級生がみんなのこと、食い入るように真剣に見つめていたよ。すごかった。よくぞここまで、というくらいに素晴らしかった。」

応援団の子ども達の顔にも笑顔がほころぶ。

「ここまでの10日間は、もうガンガン追い込んで、燃えて、燃えてやる気を200%まで高めて頑張ってきた。だから今日は伝わった。でも、みんなの本番は、いつだい?」

「日曜日です。」

「うん、だからね。あとは、そのやる気の限界突破の状態を、しっかり形にできるように。今日と明日の練習はお休みにします。この10日間昼休みも、朝休みもなく、放課後も頑張って練習してたまった疲れを、水曜、木曜でしっかり回復してください。」

限界の緊張感で頑張っていた子ども達、すぐさま「やったぁ!」の叫び声。

本当の本番は、実は当日ではない。

このたった一度の全体練習までを乗り切ったこの子達にとって、

運動会は間違いなく素敵な思い出になる事が約束されたと確信できる。

後は怪我無く事故なく本番の日が迎えられるように。

そんな祈りを思いながら、中休みは解散したのだった。

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