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席は離れても、心は一つに(2)

静かに話を聴きながら、うんうん、と頷く子どもたち。

本当に、真剣に耳を傾けてくれる。

だからこそ、伝わるように、気持ちを込めて。僕は続けた。

「みんなにとっては、人生で最初の卒業式で、それも去年は自分たちの感触では、上手くできなかったなと苦手に思う気持ちもあると思う。けど、今先生が話した2つの願いのうち、2つ目の願い。おうちの人たちに、安心して喜んでもらえるかどうかは、先生は何も手助けしてあげることはできない。横から名前をはきはきと呼んで、みんなに元気を伝播させるくらいしかね。だからみんなには、この最後の試練に打ち勝ってほしい、みんななら大丈夫、できるから。と思っているんよ。」

子ども達には、やるぞという気持ちの熱が感じられ始めていた。

そこで、僕は、子ども達に質問を投げかけた。

「なので、今日は一言セリフも決めますが、その前に最初に不安に思っている事や、心配していることをみんなで出せるだけ出し合おうと思います。卒業式に向けて、今正直に思ってることを何でも言ってみて。」

え、やる気を出していくんじゃないの?

子ども達はちょっと面食らったような顔になったが、

しばらく考えて思いを口にし始めた。

「正直、何で卒業式をしなきゃいけないのかがわからん。証書をもらうだけなら教室で、ととろん先生とあゆ先生から証書をもらって終わりでもいいと思う。」

「自分が一生懸命頑張っていても、周りの(交流学級の)ふざけている奴らを見ると腹が立ってイライラが高まっていくんだ。」

「じっとしている時間が、いつもの時間よりずっと長く感じられて、座っているだけなのにすごくきつい。」

「去年のきつかった記憶が残っているから、今年乗り越えられるかどうかはやっぱり不安です。」

「本番だけなら何とかなるかもしれんけど、練習はどうしても耐えられない時がある気がする。その時は外に出てもいいのかな。」

ととろん先生が言ったことは、確かに納得できるし頑張りたい。

けれどやっぱり子ども達の心の中にある不安を、見えないようにして、

押しつぶして頑張らせるのは、違うと思ったから。

聞いてよかった、そう感じるほどに、子ども達は本音の気持ちを言葉にしてくれた。

この一年間で、何よりもこの子達に獲得してほしかったこと。

【自分の気持ちに素直に向き合って、その上で解決方法を考える。】

気持ちのコントロールの仕方を自分なりに発見して、

周りに合わせられる術を身に付けることは、確かに大切なことだ。

だけど、それと同じ、いやそれ以上に大事な事は、

自分の本当の気持ちを、押し殺さない事だと信じて、

この子達とは、一年間沢山のコミュニケーションをとってきたと思う。

その集大成が、まさに今日の何気ない質問で、しっかりと表れた。

子ども達は、本当に、自分の気持ちを素直に。

押し殺しがまんするでもなく、爆発させるでもなく、

落ち着いた心持ちのままで、言葉に出してくれた。

この言葉を元に、子ども達が安心して乗り越えられる手立てを考えよう。


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