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今度は果たすぞ、夏の雪辱(4)

「延長戦か、、、だいぶ消耗しますね。」

そう僕がつぶやくと、横にいたコーチのお父さんが、

「先生、少年野球のことだいぶわかってきましたね。」

と、褒めてくださった。

「はい、夏も最後まで応援させてもらったし、今回ももちろん最後まで応援する気なので、だいぶわかってきたかもしれません。」

「ありがとうございます。子どもたち、本当に先生が応援に来てくださると、モチベーションが上がるみたいで。練習の時にも、今度先生来てくれるかなぁ。って話したりしているのが聞こえてくると、やっぱりいっつもがみがみいう親コーチとは違って嬉しいのだと思います。」

「そう言ってもらえたら嬉しいです。僕も学校ではがみがみおじさん先生で疎まれていると思うんですけどね。あ、でも学級でYくんと話をしているときには、おうちの人にありがたいって気持ちが伝わってくるようなことも話してくれるんですよ。」

「そうなんですか。」

「『僕の試合のために、出かける用事なんかも後回しにして応援に来てくれたり、それなのにみんな嫌な顔もせずに、がんばれ!っていっつも。だから頑張ろうって気持ちになれるんよ。』って。子ども達はおうちの人に対してもありがたい気持ちとか、だから頑張るぞって気持ちをいつも持っているんだなと思うと、素敵だなと思うんです。」

そう伝えると、話していたお父さんは、同じくコーチになっているYくんのお父さんを呼んで、

「Yくん、ととろん先生にこんなこと話してたんだってよ。」

と、Yくんのお父さんに伝える。Yくんのお父さんはじっとその話を聞いて、

「そんな風に話してくれているんですね。」

と、嬉しそうに笑った。

大会の運営の仕事も忙しく働いているYくんのお父さんは、

「しっかり大会も支えなですね。」

と言って、ネット裏の放送室もかねた本部の方に駆けていく。

延長戦がそろそろ終わりそうな雰囲気になってきた。

「勝った方が、明日の決勝戦ですね。」

隣のお父さんに再び声をかけると、お父さんはにっこりしながら、

「今回の大会は今年からできた大会で第一回大会なんですよ。だから記念になる大会で優勝させてあげたいんですけどね。」

そうだよなぁ。そんな節目に参加できて勝ち上れるだけの強さがあったら、

狙いたよなぁ。何とか勝たせてあげたいなぁ。

と、そんなことを思いながら、「そうですね。」頷いていると、

「それに今回の大会はスポンサーさんが面白い副賞もつけてくださっているんですよ。」

大会の名目を冠している会社が、今回のスポンサーさんなのだそうだ。

耳にしたことは無いのだが、聞くと地元で他業種展開されている会社で、

今回は優勝チームには、副賞がついてくるという。

「そうなんですね。どんな副賞なんだろ。」

そう言うとお父さんは、ニヤッとした笑顔で、

「子ども達には内緒にしてるんですけどね。優勝チームは、マクドナルド貸し切りで食べ放題がついてくるんです。」

そ、それは…子どもたちは絶対喜ぶやつだ。僕は驚きながらも小声で、

「じゃあ、もう、絶対優勝して副賞ゲットしたいですね。」

「先に子ども達に副賞の話をしたら、変な欲が出るかもと思って黙っているんですけど、楽しみですね。」

と、ワクワクした様子で、子どもたちを見つめていた。


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