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なにげないお宝鑑定が・・・(前)

木枯らしが吹き始めた、秋の終わり。

虫達もすっかり逃がして、秋みつけも終わりかなと感じていた頃、

2の3の子ども達は、運動場のフェンス際に植えていたサツマイモを、

みんなで焼き芋にして食べて、秋を満喫したころだった。

体育では、鉄棒運動の学習をしていて、

小学校に上がる前から鍛えられていた子たちは、

ぐるぐると、逆上がり、前回り、足掛け上がり、地球周りなどを楽しむが、

一方で、小学校に上がって初めての子達には、なかなかの苦手科目。

逆上がりは低学年のうちにできているにこしたことは無いとは思うものの、

まずはしっかり握って、鉄棒に腰を乗っけるところから。

前回り下りを終えるまでしっかりと握っておける練習だ。

それぞれが友達同士で教え合いながら応援し合いながら、

僕はおっかなびっくりの子ども達に付きながら進めていると、

「先生!まだお芋あった!」

と、H君が大きなサツマイモを持ってきた。

鉄棒とフェンス端のサツマイモ畑はとても近いので、

くるッと回って、列の後ろに並ぶときに、目に入ったのだろう。

「わぁ、いいなぁ。」

「焼き芋したのより大きいやん!」

などと、みんなが寄ってきてわいわい芋端会議を始めたので、

「Hくんちょっと先生にも見せて・・・・。どれどれ・・・、

おお!これはこの学校に伝わる伝説のサツマイモの王だ。」

「え!サツマイモの王!」

「そうじゃ、毎年この畑のサツマイモを大豊作にしてくれるというサツマイモの王。それがこれじゃな。今年も仕事を終えて、冬眠前に少し日向ぼっこに出てきていたのじゃろう。」

RPGに出てくるフードをかぶった老人の占い師みたいな口調に変えながら、

H君にそのサツマイモを返す。

「なかなかのレアものじゃが、王がいなくなると、来年からサツマイモが取れなくなってしまうでのう。H君の手で一番暖かそうな土の中に、戻してあげておくれ。」

というと、H君「わかった!先生スコップもってきていい?!」

と、たったか走って教室のベランダにあるスコップを取りに行った。

「先生、お宝鑑定できるの!?」

Sちゃんが目を丸くしてのぞき込んできた。

調子に乗った僕は、

「うむ、この運動場は昔お宝がたくさん隠されたという山の跡だからのう。ほかにも探せば、サツマイモの王以上の、お宝も見つかるかもしれん。たとえば・・・・」

と、鉄棒の下で、半分顔を出してキラキラと輝いていた緑の石を掘り返し、

「この石には竜の!竜の魂が宿っておる。とんでもないお宝じゃ!」

と言ってしまったのが我ながら調子に乗りすぎた。

素直で感情豊かな2の3の子達をしばらく乗せてしまって、

後々まで続く2の3のブームの始まりになってしまうのだった。


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