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歴史の魅力を楽しみ尽くそう(5・了)

「あー、そっちに行かないほうがいいんじゃ。」

「いやいや、Tさんのとこの武将の数、半端ないから。」

「おれは、もう一回佐渡島から再起を!うわぁ、まだかぁ…。」

あちこちで聞こえてくる、天下統一ゲームを楽しむ声。

やはり戦国時代は、総じて男子の方が得意ではあったが、

ボードゲームになると、男女差は関係なく、

2回戦をしていると、女の子たちもカードの特性をよく読みながら、

戦略を考えている姿も見て取れた。

また、自分はもうしないけどアドバイザーとして助言をする子も出てきて、

さながら武将に仕える軍師の様。

男子武将に男子軍師だと、いやおれの選択が、それはやめたほうがいい。

とターンを行動するまでに、揉めている友達同士も見られたが、

女子武将についたアドバイザー軍師の子達の方は、

武将の子がよく話を聞いてくれるので、着々と領土を広げている。

なるほど、カード以外の話し合いの要素や、みんなで状況を考える力も、

このゲームでは楽しみながら、伸ばすことが出来ているのだ。

1人で用意しているときは、もうただただ印刷室で一人残業で、

「あー、もうこんな量になるなら止めとけばよかったか?」

と、ちょっと作成中に心折れそうになったが、

そんなきつかった裏方仕事も、子どもたちがこうして楽しんでくれている様子を見れば、

すっかり帳消しになってしまうのが、先生という性分なのかもしれない。

あっという間に2時間終わって、中休みに。

2回戦の頂上決戦の方も、勝負がつき、第1回天下統一ゲームの天下人は、

軍師のアドバイスをよく聞いて戦略を進めたRさんになった。

「さ、じゃあ、天下統一ゲームは、とりあえずセットごとに廊下に置いておくから、これからも遊んでいいからね。」

そう言って2時間目を終わると、子どもたちはすぐにグループに分かれて、

まだ対戦していない友達同士でゲームを始めていた。

・・・3時間目のチャイムが鳴って、ちょっと冷たいものを飲んで教室に上がってくると、

「うおー!秀吉で刀狩キター!歴史通りやん。」

「こっちは秀吉の御屋形様に信玄、謙信も揃ってる状態で攻め込もう。」

「それは、チートやろ!待って待って。」

とまだまだ盛り上がっている。

「3時間目始めるよー。」

と声をかけると、いつもならぱっと切り替える子どもたちだが、

「先生もう1時間だけ!社会にしてほしいです!」

「えー、2時間社会やったやん、もう他の教科するよ。」

それでももうひと声と食い下がるYくん。

「お願い!もう一時間!」

1学期の授業はほとんど終わっているし、そんな日もあっていいか。

「じゃあ、今日は4時間目まで社会にするか。」

やったぁ!と盛り上がる子ども達を見て、

上手く作れてよかったなぁと、ほっとした気持ちになるのだった。


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