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みんなで楽しむことは、実はけっこう難しい(1)

「先生、二学期の最後にお楽しみ会をしてもいいですか?」

Mさんが、相談してきたのは12月が始まってすぐのことだった。

「また、突然に。上手くできるならいいけど。」

子どもたちが企画・プロデュースして行うお楽しみ会は、

学級活動の中でも、よくあるものなのだけれど、

いかんせん六年生になると、学校行事が多くて、

なかなか学級で楽しむ時間を確保するのが難しい。

当然この感想に、同業の方からは、賛否はあると思うのだけれど、

僕自身の体感としての6年生は、もう一年中駆け抜けるように卒業まで行っちゃう。

そんな感覚なのである。

なので、学級で話し合いの時間を1時間取って、

子どもたち同士で決めてた段取りの中で、

やる気のある子と、気乗りしない子の間で小さいもめごとが起こりながら、

平常の休み時間を準備にあてて、結果ぼんやり上手くいく。

という取り組みに、どうももうそんな時間は取れないよね。

というのが正直なところで、それなら、自分(担任)発信で、

ものづくりとか、レクレーションタイムで1時間取って、

わっと盛り上げてあげるほうがいいのではないか。

そう考えて動いてしまう性格なのである。

なので、この「お楽しみ会をやってもいいですか?」の提案には、

NOとは言わないものの、上手くいくこともほとんどないんだがなぁ。と、

基本的には消極的なのである。

6年生は忙しいから、お楽しみ会もさせてもらえない、と言う事ではないけれど、

学校行事、委員会活動、下級生との関わり、そして自分たちの学習など、

全方位で頑張っている子どもたちの様子を評価しているからこそ、

『楽しい事なら、先生も用意しているけど、どうする?』

と言いたい。けれど先に「自分たちでできます。」宣言をされたので、

一旦その言葉を飲み込んで、話を聞いてみることにした。

「確かにもうそろそろ二学期も終わりの頃だし、お楽しみ会をしたいという提案は、合っても全然違和感ないんだけど、何でやりたくなったの?」

「えっと、1組も2組も3組も、お楽しみ会をする計画を立てて、やるって聞いたから、私たちもやりたいなって思って。」

なるほど、動機も王道で、そして一番全員のモチベーションがばらつきやすいものだ。

「わかった、じゃあとりあえず、次の3時間目に、先生からみんなに、提案があったことを告知して、今日の5時間目・・・・算数はもう2学期のまとめまで進んでいるから、この時間に話し合いをすることにしようか。」

「いいんですか?」

Mさんはぱっと明るい顔になって確認してくる。

「いいも何も。2学期もみんなよく頑張ったからね。お楽しみ会の一つや二つ、させてあげるのは全然大丈夫よ。ただし、お楽しみ会というからには、みんなが楽しめる会にしてください。それが条件だよ。」

「わかりました!」

そう言って嬉しそうに一緒に交渉に来た子達はハイタッチをしている。

さて、今回の提案は、どのくらいうまくいくのだろう。

ぼんやりと不安な気持ちを抱きながらも、ひとまず僕は見守ることに決めたのだった。


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