自分で獲った野菜の味は別格(前)
2年生というと、日本の小学校では、社会科・理科の科目がなく、
その二つが合わさって、体験活動が主となる生活科が授業の中にある。
2の3の子ども達のこと思い出してみると、
そんな生活科で取り組んだ中での、体験の時の思い出が多く思い出された。
中でも一番鮮烈に記憶に残っているのが、夏野菜についての思い出だ。
生活科の中で、A小学校の2年生は、1学期が始まるとすぐに、
一人一鉢で野菜を育てる。
ミニトマト、ナスビ、オクラ、ピーマン、トウモロコシ。
それぞれが育てたい野菜を5種類の中から選び、
1年生の時に朝顔を育てた1鉢プランターに、幼芽の苗の状態で植えて、
毎朝ペットボトルで水をやり、育てていく。
国語の教科書では、「かんさつ名人になろう」という単元があり、
毎週子どもは自分の野菜の育ち具合を絵にかき、文にして、
その経過を観察しながら、育っていく様子を楽しみに見守っていく。
一人一人の鉢植えに育った野菜は、夏休み前後には収穫できるようになり、
学期中に取れた野菜は、ビニール袋に入れて持って帰り、
夏休みには鉢植えを持って帰るので、おうちで食べることになる。
一人人苗ずつ用意する夏野菜だが、鉢植え用とは別に、
学年園という学校の敷地内に設けられた各学年用の花壇にも、
2年生は夏野菜を植えていた。
6月の終わり、北部九州での梅雨は、
雨と晴れがちょうどよいバランスで訪れてくれて、
学年園の夏野菜は、もうそれはそれは大豊作になった。
毎朝かご一杯に野菜が収穫できるのである。
そして、水やりと草むしりは、子ども達と一緒にするけれど、
枝を支える棒や、囲いなどはしていないので、
もうジャングルのように育った夏野菜たちは、学年園を飛び出して、
ミニトマトなどはうねりながら地を這い、そこに大量の実を付ける有様で。
そのまま腐らせてしまってももったいないと思い、
教室に行くとまず真っ先に、野菜の収穫に行っていた。
子ども達も、自分の鉢への水やりが終わると、
先にガードのついた工作はさみをもって、収穫にやってくる。
「先生、このナスはもういいかな?」
「ミニトマト今日もすごいいっぱい!昨日も獲ったのに。」
育てる様子を観察するのも楽しいが、やはり収穫の楽しさが一番だ。
15分ほどで今日も青いカゴいっぱいに獲れた野菜たち。
ミニトマト、ナス、オクラ、ピーマン。
トウモロコシだけはまだ実っていないので4種類。
教室のベランダ側にある教卓にかごを置いて朝のホームルームが始まる。
収穫してきた子たちはちょっと上がったテンションのまま、
元気のいい「はい!元気です!」の返事で、健康観察に応えてくれる。
眠そうな子や、まだちょっと元気エンジンのかからない子にも、
一気に楽しい雰囲気が広がって、今日も欠席無し。
時間割を確認する前に、僕はミニトマトを1つ、ぱくっと口に入れた。
「あー!先生ばっかずるい!」
そう言ったのは、いつも元気いっぱいのAさん。
「ほい、じゃあAさんもどうぞ。」
そう言うと、嬉しそうにミニトマトをつまんで、ぱくっ。
「うまーい。うまい!」
それが合図のように、2の3の子どもたち、続いて続いて、
「先生僕も食べたい。」
「ミニトマトまだある?」
と言って、集まってくる。
「じゃあみんな順番でどうぞ、ミニトマトだけでも全員分あるよ。」
そう言うと、どわっと手が伸びてきて野菜はあっという間に無くなった。
ん?トマトだけじゃなく、ナスも、ピーマンもオクラもなくなっている。
子ども達に目をやると、ナスも、ピーマンも、オクラも、
がぶっと口にしていた。ぼくは、唖然としたまま、声をかける。
「えーっと・・・・・うまい?」
「うまーい!」
「こんなん食べたことないくらいにうまい!」
自分たちで収穫したての野菜は、
どうやらナスも、ピーマンも、オクラも、
生でも最高に美味しいらしい。
あっという間に空っぽになったかごをみて、
ちょっとびっくりしていると、さすがにそれはそうだよね。
H君が一言、
「オクラはうまいけどチクチクするね。」
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