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自分の失敗を、子どもの教訓に

子ども達に、防災、減災の話をするときに、

あーしたらよい、こーしたほうが良いという色々な知識を共有すること。

大きな災害に対してどんな心持ちで向き合うかを交流すること。

そうした方法で、子ども達と一緒に、命を守る術や、

日頃の意識付けを深めていくことはすごく大切で。

子ども達が、より共感でき、自戒できるようにするために、

毎年話している話がある。それは僕自身の子ども時代、

小学校の低学年の時の話だ。

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小学2年生だったととろん少年は、だいぶ田舎で育った少年で、

田んぼを駆け回り、川で泳いだりして遊ぶのが日常のような場所で、

中学校を卒業するまで育った。

家のお風呂は、薪風呂で、毎日裏口で薪を炊いてお湯を焚く。

そんな家で、昭和の田舎であるので、家には普通にマッチもあった。

ある日、何を思ったかととろん少年は、マッチに興味を持つ。

いつもじいちゃんがタバコの火をつけるのに使うマッチ箱は、

大きな正方形の箱で、擦り口も四面全部についている特大のものだ。

それが居間のちゃぶ台の真ん中に、灰皿と一緒においてある。

いつものなんてことのない光景だが、

この日はなぜか、それに興味を持ってしまった。

マッチをこするとぽうっと火が付く。

「おー。」と感激して、灰皿にこすりつける。

そんなことを何度も繰り返していると、どうにも、楽しくなってくる。

5本6本とこすって火をつけては消しと繰り返しているうちに、

ちょっとだけ何かに火をつけたくなってしまった。

ふと目をやると横には障子があった。

大掃除の時に指で穴をあけると楽しいやつだ。

そのとき2年生の僕の想像力は、全くと言っていいほど的外れで、

(あれだけ穴をあける時も丈夫な障子なら、ちょっとマッチとつけても少し焦げた穴が開くくらいだろう)

そんな軽い気持ちでマッチの火を近づけると、

ボボボボボウォ・・・・

蛍の光にも届かないほどに、消えかけの赤い球だったマッチの火玉は、

あっという間に、障子全体に燃え広がった。

「うわあぁああああぁ。」

驚いて大声を出したところに、庭にいたじいちゃんが「どうした!」

と入ってきて、慌てて外のバケツで水をかけて消火したものの、

一個間違えば大火事になる所だった。

その上、言い訳でウソまでついてしまったととろん少年。

いわずもがな、じいちゃんにこっぴどく叱られた。

戦争にも行ったじいちゃんの罰は厳しいもので、

僕は一晩裏庭の栗の木に吊し上げられて、怖くて寒い思いをしたのだった。

罰をもらって、もう火はこりごりだと思った僕だったが、

じいちゃんは次の日から僕に仕事を与えた。

それは、薪風呂の風呂焚き。

「火の怖さを知った者だから、火の扱いには注意をする。

 今日から風呂焚きをして、正しい火の扱い方を、体で覚えなさい。」

じいちゃんは僕に、火の正しい扱い方を、教えてくれた。

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「だからね、みんなも火の扱いだけは絶対に気を付けなさい。本当に火はあっという間になんでも燃やして奪ってしまうから。」

そう言って話を締めくくる。

いつもこの話をすると、みんな大笑いしながらこの話を聞いてくれる。

そして最後に「いいじいちゃんだね。」と感想を言ってくれる。

子ども達に毎回する自分の昔の失敗談。

身近な大人の失敗話を昔話のように話して聞かせるのも、

子どもが共感しながら記憶に残る良い方法だと感じている。




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