やる気スイッチは、子ども自身でつけるもの(2)
「船長、凄く助かります。ソーランやりましょう。」
と、姉さんもその話に前向きに答える。僕も同じ気持ちだ。
船長と過ごしていると、その凄い手腕には日々学ぶことがあるのだが、
こういった大きな行事を、いかに効率的に進むように段取りを組み立てるか、
そしてそれが、子ども達のやる気につながるか、本番までの時間に、
どのように指導していけば、そのやる気が維持されて本番に向えるか。
そして、観覧に来るおうちの方に、子ども達の頑張りがより伝わるか、
そういったものが、全部計画の中に含まれていて、子どもはもちろんのこと、
おうちの人も、指導するこちらの側も、楽しみながら取り組めるものを、
船長は今!というタイミングでばっちり提示してくださる。
これは、もう長年の経験の中で実践されてきたことで、良いものと思ったものを、
その場限りでなくしっかり蓄積して、いつでも使えるよう知識の引き出しに入れてあると言う事だ。
これは、簡単なようでその実なかなかできる事ではない。
学校で子ども達と向き合う日々を過ごしている中で、子ども達を盛り上がらせたい、
子ども達がより輝くようなことをさせてあげたいと考えるとき、
その頭の中で考えを巡らせる中心には『その時受け持っている子ども達』がいる。
なので、これはきっと面白い、楽しくなる、子どもたちが喜ぶと思って実践したものは、
往々にして、その時限りのものになりがちなのだ。
だが、一生懸命に頭をひねらせ、工夫を凝らした実践の内容が、
その時の子ども達のために考え出したものであれ、
それが上手くいった時に、「これはまた使える。」と気付いて、
自分の知識の引き出しに蓄積していくことをしていくと、
船長のように、今!というときに、「いいのがあるよ。」と提示することが出来る。
もちろん、姉さんにも、僕にも、各々自分の経験の中で培ってきた引き出しの中身はあるのだけれど、
船長のそれは、まさに「ゆたか丸」の全てのクルー、つまり学年全体を、
前向きに、同じ目標に向かって進みたくなるように実践できるものがいくつもあるのだ。
この人は、これまでどれだけの修羅場をくぐってきたのだろう。
「はい、これで一つ悩み事は解決したんだから、ゴールデンウィークは、しっかり休むこと。いいね。」
と、姉さんと僕にそう言って笑いかける船長に、
いつか船長のこれまでの話を聞いてみたいなと思ったのだった。
「船長ありがとうございます。」
そう言うと、気にしないでいいよ。といった風に手を振りながら、
珈琲を飲みに後ろの休憩スペースに向かう。
途中で、すっとこちらを向いて、
「連休明けにすぐ動き出せるように、一休みしたら、テレビの移動までさせておこう。」
と、にかっと笑った。