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今度は果たすぞ、夏の雪辱(1)

10月の末、学習発表会も無事に終わり、6の4との時間も

いよいよ残すところ5か月になってきた、そんな秋の頃、

「先生、今度野球の試合あるよ。」

Yくんが、帰り際に話しかけてくれた。

「え?!6年生は夏の大会で最後じゃなかったの?」

「うん、今年からね、新しいトーナメント大会が秋にできてね。その1回戦から3回戦は先週、先々週にあったんだけど、うちのチーム勝ち残ってるんよ。」

「うんうん、実力は間違いないからね。夏も応援楽しかったし。」

「でね、今度の連休が、準決勝と、決勝、3位決定戦で、日・月であるんだけど・・・。」

「おお!場所は?!行く行く。!」

「うん!場所は夏休みに準決勝と決勝があった球技場だよ。今回は優勝に向けて気合いが入っているから、応援してね。」

「もちろんさ!教えてくれてありがとう。絶対行くからね。」

季節は移ろい2学期という日常が目まぐるしく流れていくと、

どうしても仕事に忙殺されてしまう学校の先生業務。

Yくんは、

「本当は大会が始まった時から、声かけようかなって、家では話してたんだけど、父さんや母さんから、夏休みと違って忙しいだろうから、勝ち残ってからにしたらどうだって言われて。」

とこちらの忙しさを見て気を遣ってくれていたようだ。

ありがたく、申し訳なく、そして嬉しい気持ちがわっと膨らんだ僕は、

「気を遣わせてしまったね。でも先生はもうYくんたちの試合はすごく応援していて楽しいって知ってるから、先生が元気をもらうためにも、ぜひ行かせてもらうね。ありがとう。」

と感謝の気持ちを伝えた。

「それで、夏に負けたあのM小学校のチームは、今回もまたライバルになりそうなの?」

「ですね。ただ今回はM小学校のチームとは決勝まで当たらないので、今度は負けませんよ。」

「となると、夏の雪辱を晴らすチャンスだね。」

「はい、もうみんな気合入ってます。」

「調子はどんな感じなの?」

「3回戦まで全部コールドで勝ってますから、打線の調子もいいんです。」

「それはますます楽しみだね。Yくんのピッチングはどうだい?」

「相変わらず、父さんたちにはよくダメ出しされますけど、でも悪くはないですね。あと、ちょっと調子が悪い時には、どんな投球をすればいいか考えろって、夏以降だいぶ言われてきているから、考えて投げてます。」

Yくんの言葉からは、夏に負けた時から、

また一つレベルアップをするために練習を積んできたんだという思いが、

ひしひしと伝わってきた。

今年が節目の集大成のチーム。おうちの人にとっても、Y君たちにとっても。

どうか勝ちますように。そう願うだけでなく、

応援に行ける幸せをおすそ分けしてもらえていることにありがたさを感じながら、

僕の11月最初の連休は、応援という素敵なイベントとなるのだった。

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