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自分で獲った野菜の味は別格(後)

2の3の教室は、学年園から一番遠い距離にある。

同学年のO先生と、N先生には、毎朝収穫していい旨、

確認と了解は得ているものの、学年園での収穫は、

2の3が一番行っていた。

「それにしてもよく獲れるね。今年は。」

と、先生方と話していると、主任のO先生。

「じゃあ、夏の教室で子ども達に食べさせてあげようか。」

と、素敵な提案をしてくださった。

夏の教室は、僕がA小学校にいた当時の頃まで、

毎年この街の小学校で行われていた取り組みで、

夏休みが始まってから4・5日の間、

希望する子は朝の8時半から11時ごろまで、

学校で学習して過ごすというものだった。

当然希望制なので、全員がそろわない前提だから、

授業をしたりはしない。夏休みの宿題を進めたり、

苦手なひっ算や漢字を練習したり、そしてそれを教室で行えるので、

担任は学期中よりも一人一人に付いて、教えることができる。

そんな夏の教室。

1学期中には収穫の叶わなかったトウモロコシも、

夏休み開始の海の日を取り込んだ3連休の週末をまたぐと、

すっかり太って食べごろになっていて、

夏の教室が始まると、5種類の野菜は、学期中よりさらに勢いを増して、

大豊作の実り放題になってきた。

そして、希望制の夏の教室、2年生は、ほぼ全員が毎日来ており、

これは、授業を進めてもいいんじゃないか?と思うくらいの出席率で。

夏野菜も、ほぼ全員に食べてもらえる見通しとなった。

ナスとピーマンは、油で炒めてウスターソースを絡めて。

オクラとトウモロコシは、大鍋でささっと塩茹でに。

ミニトマトはそのままで。

1組さんも2組さんも、お皿いっぱいに調理された野菜を、

小皿に取り分けて、みんなで食べることができた。

さて2の3の子たちの反応はというと。

「やっぱり、学校の野菜が一番おいしい。」

と、とれたて野菜が大好きになっている声が聞こえる中、

「あ、オクラはゆでたほうがおいしい。」

「ナスも野菜炒めにする方がもっと美味しいんだね。」

と、調理したほうがおいしくなることに気付く声も。

「ピーマンは、生の方がおいしかった。」

そんな感想が聞こえてきたので、残ったピーマンを千切りにして、

みんなで味比べをしてみると、確かに炒めたほうが苦みが強い。

「本当だ。生の方が甘い。」

子どもの舌の感覚は、とっても鋭敏だと、改めて知った。

そしてどうやら一番楽しみにしていたトウモロコシは、

「うまーい!」

おそらく家で食べたことのあるトウモロコシや、

給食で出てくるトウモロコシよりは、ずっと小さい学年園のトウモロコシ。

けれどもそこは自分たちで収穫した野菜の魔法。

中には芯までガリガリ食べきる子もいて、

「やっぱり野菜は学校で獲れたのが一番だな。」

と満足そうな子ども達の顔は、ひまわりに負けない満面の笑顔だった。




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