やる気スイッチは、子ども自身でつけるもの(4)
「まぁ、まず今日は、DVDを見せるから、よく見ておいて。」
そう言うと船長は、教室から移動させてきたテレビとDVDのスイッチを入れた。
画面には、例のタイトルウインドウが。
「これは、みんなが生まれるより少し前の頃に、テレビドラマでも使用されてはやったりもしたんだけど、もともとは、漁師さんたちの力強さを表現した踊りなんだね。とても激しい踊りだけど、振付が漁をしている様子に見えるかどうかと意識しながら見てみてね。」
再生すると、そこには法被姿の船長が以前の学校で受け持った子ども達の隊列をなした姿が、
ピクリとも動かぬ静止姿勢で、ソーラン節が始まるのを待っている。
一瞬再生されているの?と思うくらいに動かない画面から、すでに緊張感が伝わってくる。
前走が流れ始めると、寸分のずれもなく激しく腕を上下させて波が表現される。
100人近い人数が一斉にそろった動作を決める踊りは、圧巻だった。
踊りは後半になるにつれて動きの激しさも増し、大いに躍動したのち、
最後には「やー!!」とびしっと全員で止まって、ポーズを決める。
見ている子ども達は、踊りの迫力に圧倒され、じーっと見つめるように動画を観ていた。
そして、終わりと同時に、画面の向こうの十数年も前の6年生が踊った演技に、意識せずに拍手をしていたのだった。
「・・・と、これを、今年はみんなでやってみようと思う。そして、連休明けから、この集会に使っている教室を、朝登校時間には開放して、自主練したい人はここで踊れるようにするので、今の踊りを見て、やるぞ!という気持ちに火が付いた人は、どしどし練習においで。そうしてやる気があってカッコよく踊れるようになった人には、ジャンジャンみんなのお手本にもなってもらうから。」
と船長はそう言って、子ども達にソーラン節の告知をしたのだった。
帰りの会が終わると、Kさんと、Mさんの二人が訊ねてきた。
「先生、今日早帰りやん。でね、今日の放課後から、ソーラン節練習していきたいんだけどダメかな。」
そんなのいいに決まってるじゃないか。と思ったものの、
船長のクラスや姉さんのクラスの子達は、許可されていないかもしれない。
僕は「すぐ確認してこようね。」
といって、姉さんと船長の教室に行ったが、二人はもう職員室に降りて行っていたようで教室にはいなかった。
・・・・が、廊下の奥の学年集会をしている部屋から、音楽が聞こえてくる。
「Kさん、Mさん、行ってみよう。」
と、二人と一緒に、部屋まで行ってみると、姉さんと船長が談笑している横で、
4・5人の子が、ソーランを踊っているのだった。
「お、ととろのとこからもさっそくきたか。あと20分踊っていいぞ。」
船長はKさんとMさんに声をかけてくれた。
二人はランドセルを壁際において、テレビ画面のお手本動画を観ながら見様見真似で踊り始める。
「これだけやる気のある子がいるっていうのが、嬉しいよな。」
船長の言葉に、僕は何度もうなずくのだった。
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