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なにげないお宝鑑定が・・・(中)

「えー!竜の魂が!」

もう体育の途中に何が始まったんだか状態である。

2の3の子たちは、乗り上手の乗せ上手。

僕がちょこんと、面白そうな事を始めるはじめの一歩を子ども達に示すと、

ぼくも私もと乗ってきてくれる。

鉄棒運動どころじゃなくなって、探索好きの子ども達は、

運動場の石や、畑に転がっている草や木の実で、

特徴的なものを探しては持って来だした。

「これは、もしや、空まで伸びたジャックの豆の木の子孫ではないか?!」

「うわー!じゃあ育てたら空まで行くのかな。」

「ムムム!この黒い石には、太陽の力を蓄えることができるぞ。こうして少しかざすと、ほら、温かくなってきた!」

「本当だ!温かい!すげー!これでカイロいらんやん。」

次々に鑑定する僕も、よくもまぁ次から次に、

面白鑑定をできるものだなと思うくらいに鑑定をしていく。

「これは風雷鳥の羽!集めて扇子を作れば、台風のような風を起こすぞ。」

「なんと、この石が出てきたか!これは遠い昔、この世界を支配していた虎虎族の目が化石になったものだ!ここに虎虎族が来ていた証の大発見だな。」

とまぁ、体育そっちのけでお宝鑑定会になってしまい、

そのまま、中休みに入った。

「じゃあ、ととろん鑑定士は2の3にいるから、何かお宝が見つかったら、ベランダからお宝鑑定を依頼しにおいで。チャイムが鳴ったから今日の体育は終わり!3時間目のチャイムには帰ってくるんだよ。」

そう言って運動場での体育の時間が終わる。

子ども達は、パーティーになって、面白い石を探したり、

珍しい色や形の木の実を集めたり、時々落ちてる羽根や骨を見つけたりと、

鑑定士にどんな面白い鑑定をしてもらおうかというのを目当てに、

広い運動場を駆け回って中休みを過ごしていた。

さて、自分の着替えを急いで済ませて、教室に戻ると、

教卓横のベランダには、7人8人の列ができていて。

「鑑定士、不思議な模様の石がありました。」

「ととろん鑑定士、この木の実は他のとは形がずいぶん違います。」

「この葉っぱのとげとげは、引っ付くのに痛くないです。なんでしょう。」

と、鑑定を、鑑定を、と大賑わい。

窓を開けて、机の上に逢った大きな虫眼鏡をさも鑑定士の様に近づけて、

「ムムム!この模様は……」

「おお、この木の実は100本に一個できるかの栄養50倍の・・・。」

と、子ども達が持ってきたものを大事そうに両手で前に差し出すものに、

一つ一つ驚きながら鑑定を付けていく。

キーン、コーン、カーン、コーン。

あっという間に15分の中休みが終わる。

「えー!まだ鑑定してもらってない!」

わいわい騒がしくなるベランダ。

「わかった、じゃあ、見つけたものを持って教室に入ってきて。3時間目は鑑定してもらったもので、お宝レポートを作ろうか。」

そう答えると子ども達は「やったぁ!」とはしゃぎながら、

下足センターにかけていく。

かくして3時間目は、一人一個ずつのお宝を鑑定してあげて、

鑑定してもらった子はそれをスケッチして言葉でまとめてという、

何だか、不思議な時間になっていったのであった。


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