見出し画像

素直な心と見事な行動

6の1の話で約2か月進んできたととろん学級思い出日誌。

卒業の思い出まで一区切りして、次に浮かんだエピソードは、

何度も受け持った6年生、ではなくて、2年生の子ども達だった。

A小学校2の3の子ども達は、今でも、

「この子たちを6年生で持つ事ができたらよかったのに」

そう思ってやまない子達だ。

昨日までの思い出いっぱいの6の1に、出会う前に出会った子ども達。

3年間の任用中に、2年生と4年生で、担任をさせてもらった。

先週から、昨晩も、東北地方で地震が起こる中で、

思い出した今回のエピソード。2の3の子ども達に感服した話だ。

・・・・・・・・・・・・・

元気いっぱいの2の3の子どもたちは、

よく遊び、よく笑い、よく食べて、仲良くケンカもいっぱい。

そんな感情豊かで素直な子ども達だ。

東日本大震災が起こった年の4月から、子ども達の担任になって、

災害が来たときには、どんな気持ちで自分の命を守らなきゃいけないかを、

口酸っぱく、でもしっかり噛み砕いて伝わるように、

話をしてきた。

「学校で行う避難訓練を本気で行動する事は、いざというときに、

自分が自信をもって行動できるようにする練習だからね。

先生は、みんなを連れてみんなの命を最優先に避難で2の3を守るけど、

もし、この中の誰かが、いないとか逃げ遅れたとかあったら、

絶対に先生は助けに行くから。ただし、先生の命も一つしかない。

だから、二人以上がそうなった場合には、助けられない人も出てくる。

そんな悲しいことにならないように、避難のときには、

本気でみんなを見失わないように、一人一人がしっかり行動するんだよ。」

子ども達は、いつも一生懸命、避難訓練にしても、

避難に対する心構えにしても聞いてくれていた。

一学期の不審者対応の避難訓練、二学期の火災の避難訓練、

三学期の地震の避難訓練を、2の3みんなで済ませた、

3学期の半ばの2月の頃、今回の事件は起こる。

5時間目の授業をしていると、

『ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリ』

けたたましい音の火災報知機が鳴った。

授業をしていた手を止めて、僕はみんなに一声で指示を出す。

「並んで、ハンカチ。」

子ども達は口に軽くハンカチを当てて、さっと、後ろに二列に並んだ。

みんなと目を合わせて、確認するように頷くと、

小雨が降る中運動場の鉄棒の前まで急いで走る。

校舎からだいぶ離れたところで、子ども達と僕は、

ぽつぽつ濡れる雨の中で、並んで待っていた。

数分して校内放送が流れる。

「ただいまの非常ベルは、結露のための誤作動でした。」

子ども達は、結露はわからないが、誤作動はわかったようで。

「なんだぁ、よかった。」

「なんで誤作動したんだろう。」

「先生、僕ら早かったね。」

「うちのクラスだけだったね、でてきたの。」

雨の中で笑いながらそう話してくる。

笑顔の子ども達を見て、僕はうれしい気持ちでいっぱいになりながら

子ども達に応えた。

「うん、2の3だけだね。でもね、これがもし誤作動じゃなくて、本当の火事だったら、学校で全員が無事に助かったのは2の3だけだったってことになるね。みんな偉かったよ。」

そう言うと子ども達、雨の中で「やったぁ!」と大はしゃぎ。

本当に大事な事を、素直に心に吸収して、いざというときには行動できる。

何気ない事だけど、実際に大人子どもに関わらず、どれだけの人間が、

心と体をしっかりと繋げて動くことができるだろう。

2の3の子たちのこの日の行動に、心底感服したのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?