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マイイノベーション

木造三階建の我が家は今年で21年戦士になった。
子供たちは大人になり、さあ次は、、、
自分たちの老後どうするかという大問題。

この家を売って階段のないマンションに引っ越した方が良いのか。
はたまた、リフォームして住み続ける?

21年も経つとあちらこちら傷んでくる。
ローンがまだ残っている上に、リフォームとは。ため息が出た。

マンションを買っていたら、修繕積立をして、建物のメンテナンスに個人で挑まなくてもよかった。
それにワンフロアで老後の階段不安がなかったな。
買った当時は若かったからなあ。
体の痛い自分なんて想像できなかったよ。

今考えても仕方がないねーーー。

子育て中、子供が走り回ったり、おもちゃを床に落としたり、大声で泣いたりしても、戸建ては下の住人を気にする必要が無かった。

うんうん。
戸建てでよかったと思う。

子供が小さいうちは、3階建で不便を感じて買ってすぐマンションを内見しに行った事もあった。憧れのワンフロアマンション。

住み替え案を検討してみた。

近くのマンションの相場と我が家の値段を夫とリサーチ。

すぐに撃沈した。
マンションは高い。中古でもあまり値下がりしていないのだ。手が出せそうなマンションは50年戦士、、、、、、、。


住み続ける案を模索してみる。

ここに住み続けるとなると修繕リフォーム。
屋根 壁のサイディング、水回り。
リフォーム詐欺、ぼったくり。の、文字が頭に浮かぶ。
騙されずにリフォームをやり遂げる。
相当の労力が必要だ。いったいいくらかかるのか!?
これから健康不安も出てくる。
病院代どれだけかかる?
年金出るの?
リフォームしても数年で脚が悪くなって3階建に住めなくなったら、、、、。
1階にお風呂と洗面。6畳の洋室。2階にダイニングキッチンとリビング。3階に6畳ふた部屋のコンパクトな3階建。
階段を登れなくなったら生活できない。
不安が押し寄せる。


ここは近くにスーパーが何軒かあるし、小学校も中学校もいくつかある。
野球が出来るくらいの公園も。
大きい病院もある。
いろんな世代が暮らしていてにぎやかだ。

家から見える田んぼが気に入っている。
家の横に袋小路になった道があって、その道に面して90メートル四方の田んぼがある。
2階建てや3階建てが建ち並ぶこの辺に、ぽっかりと空いた空間。
ここだけ空が広い。
このおかげで、お隣さんやお向かいさんと肩を並べて仲良くぎゅっーと立っていても圧迫感がない。
こんな町中でも土起こしの4月には、どこからともなく野生の鳥たちがやってくる。
5月の湛水。水面に青い空が映る。
そこにポンポンポンと苗が整列。
6月、7月、その苗がグングン伸びて鮮やかな緑の葉が一斉に風にそよぐ。
8月の暑い日差しの中でも力強く土からの栄養を蓄え、秋には黄金の稲穂の上を赤とんぼが飛ぶ。収穫の後には、また鳥たちがたくさんやってきて茶色くなった田んぼをつつく。チチチ。チュンチュン。ピロロロロ。

ヤダ。
まあ。
良いところじゃない。ここ。

自分がこんなにここが好きだったとは。

愛着がありすぎて、離れられそうもない。

さて、修繕リフォームといっても、いったいどこから手をつけよう。
相場がわからない。
順番もわからない。

私はある大手の不動産会社に無料見積もりの依頼メールを送った。
無料ほど怖いものはないけど。
とりあえず進まなきゃ始まらない。
これから年老いてここに住めなくなるまで、気持ちよく楽しく暮らしたい。
どこまでできるのか検討もつかないけど、一歩を踏み出した。

この会社は、見積もりついでに、家の診断をしてくれるサービス付きで、屋根から床下まで5人がかりで診てくれる。

この家で大きい地震を2回経験したので、耐震性や、まだまだ住めるのか知りたかった。
もちろん、あわよくば信用ある大手の会社にお任せしたかった。

後日、診断箇所を写真付きで示した報告書をくれた。
まだまだキレイで床下も内壁も傷んでいない。家の重心なども見てくれて異常無し。ただし、やはり屋根と外壁のサイディングは補修して塗った方が良いとのこと。
この家にまだ住んでも大丈夫。
まだまだ住める。という御免除をもらって、ここからリフォームへ向けて一気に気持ちが固まった。

理想は遠く

ここからリフォームが一旦終了まで、足掛け3年の月日を費やす。
手持ちのリフォーム資金と、2社の見積もりと、私の理想と迷いのせめぎあい。

本当にリフォームにお金を使っていいの?
家はボロくても住めるよね。
ローンの返済に先にあてた方が良いのでは,、、、、、。
でもリフォームしたらどんなに素敵だろうか。


展示場に行ったり、リフォーム中のお家に見学に行ったり。
リフォーム全般のショールームに何回も足を運んだ。お風呂 洗面 玄関、、、、。
ああ素敵だなあ。
ショールームに行くと本当に気分が上がる。
デザインがオシャレで機能も21年前とは断然に違う。

やっぱり贅沢かしら。

リフォームでこんなに自分と向き合うことになるとは。
自分にとって何が価値があるものなのか。
どこにお金をかけるのか。
自分ってどうしたいんだろう。
これからどう生きたいんだろう。
私にとって家とはなんだ!
壮大な問題と課題になった。

バイバーイ。またね。
夕方暗くなり出して、遊んでいたお友達と別れると、帰る道々明かりがこぼれる家の窓を見ながら家路についた。
黒い海に浮かぶ灯台の灯り。
私の家には大抵灯りはついていなかった。

家と自分

家で過ごすのが好きなんだなあ。
灯りがついたこの家が好きなんだな。
家族と過ごしてきたこの家が好きなんだな。
灯りのついた自分の家の窓を外から見て思う。

この家をリフォームして大切に使おう。
それはきっと自分を大事にすることだ。

結局、大手の会社では予算が足りずやれる事が少なくて、中規模のリフォーム専門会社に依頼した。

まず、ベランダの防水。トイレを総入れ替えして、床と壁紙を決める。リビングの壁とフローリングを決める。キッチンのパネルと壁紙を決める。
楽しい。

悩む。
想像力がない。

緑の壁紙ってどお?床のダークブラウンと合うの?やっぱり無難な白い壁紙なのか。もやっと浮かんでは消えるイメージ。
楽しいやら苦しいやら。

工事が始まるといろいろトラブルが起きた。
届いた材料が注文と違ったことや、壁紙がキレイに貼れていなかったり、つけた部品が取れたり。
その度に調べたり、聞いたり、確認したり。

でも出来上がる度に感動した。
建てる時に設置位置に失敗したガス栓とコンセントを増設して使いやすくした。

ベランダに新設した水道蛇口でワンコトイレの掃除が楽々に。
ちょっとの事だけども本当に便利になった。

このちょっとの不便がなくなるだけで、1日ずっと気分がいいのだ。
逆にちょっとの不便に、21年間相当のストレスを感じていたのだと実感した。

仕事から帰って来るのが楽しい。
台所に立つのが楽しい。
ベランダからガラス越しに見る中の部屋。
素敵じゃないの。

第二弾。
お風呂。最初はつけないつもりだった浴室乾燥機は、市の補助金が背中を推してくれた。
冬のヒートショック防止になる。
使ってみると、これまた良い。
浴室を開けておくと洗面所兼脱衣所も暖かい。
シャワーで済ませたい日も入浴中暖房をつけると寒くない。
浴室暖房は最高だった。

洗面所の洗面器は陶器の四角と決めていた。そして三面鏡に憧れていた私。
少々お高いが妥協出来ずに予算オーバー。
せっかくだから。は悪魔の言葉。

そして家の外構工事。
犬走りのコンクリート化。もう雑草に悩まされることはない。ホウキで掃除すればいつでもキレイ。
最高だ。

ポストの設置。
今まで鍵無し入れ放題取り放題のパタパタポストだったけども、新しいポストは鍵付きで間接照明もつく。

夜、迷わずに家に着く。
幸せの灯り。

最大の困難は犬走りと玄関前のコンクリートだった。
新築当時は夫がアンティークレンガと枕木を使ってエントランスと駐車場をDIY。
素敵に出来上がった。

しかし、21年も経つと駐車場部分が陥没し、枕木は腐ってしまった。
長い間よく頑張ってくれたものだ。

そして今回エントランスをコンクリートメインでオシャレレンガとタイルでやり直す事にした。
ついでにずっと頭を悩ませていた犬走りの
雑草問題もコンクリートにする事てで解決したかった。

最初の仕上がりは言葉が出ないほどひどいものだった。
見守っていたご近所さんも哀れみの表情。

出来上がった門柱や、駐車場のコンクリートを見て途方にくれる私にご近所さんが声をかけてくれる。

犬走りに設置してあるクーラーの室外機の脚が斜めに傾きながらコンクリートに埋没。その周りは瓦礫のような仕上がりに。
ポストと一緒に設置したアルミの目隠しフェンスは上下が逆で、キズと隙間を発見した。

こんなことあるのだろうか。
普通にお任せしていれば出来上がると思っていたものが、普通には仕上がらないのだ。
一般人のDIYよりズサンな仕上がりになった。

初めてですか?と喉まで出かかる。
これは普通?
リフォームあるあるなの?

やり直し交渉をするために人に聞いたり、本を買って勉強したり、いろいろなところに電話した。

最初リフォーム会社の人は、謝ることもなくて、こちらがおかしいのかと思うほどだった。
これって普通ですか。混乱。

交渉の日。夫の出番だ。
問題のコンクリートの写真と問題点を並べて印刷したものをリフォーム会社の担当者に渡した。さあどうですか!?やり直しですよね。
強く言いたいが、まだまだ完成までお付き合いは続くので抑えめに。

あまりにもひどかったようで、後日やり直しの連絡がきた。

2回目のコンクリートが乾くまで、落ち着かない日々を過ごし、てんやわんやのリフォームがようやく終わった。

ぼったくられてるのか、適正価格なのか私たちには、本当のところわからない。
見積もりを比べても、項目が会社ごとに違うため、なかなか難しい。もっと明確になればいいのに。
ともあれ、リフォームが終わって半年ほど経つ。
家のお風呂に入るたび、洗面所で顔を洗うたび、リビングでくつろぐたびトイレに行くたびに、良かったなあ。
良かったなあ。と、思う。
人生のほとんどは家で過ごしているんだもの。

屋根とサイディングが残っているが、ちょっと休憩。
これも大仕事だ。

脚の筋トレを始めた。
まだまだ階段を登る。
家も自分もメンテナンスして大事に使おう。
















#創作大賞2024 #エッセイ部門

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