家の花

稀に見つかる花があり

それは内側に行くほどくすんだ虹色で

外側に行くほど純白で

それをすみかに飾っていると

困りごとが柔らかくなりうるということ

それを聞いてもぐらが

自分のすみかの竪穴に

花を1輪飾ったが

穴の中にはいろいろな生き物がいて

いつの間にか足跡などついてしまった

このままではこの花は疲れてしまうと

察したもぐらは

花と相談したが

花は一言も話さない

こまりはて

穴から出て青空を見ていた時

蝶が1羽飛んできて言った

あなたは近くに花を置いておけるからいいわね

わたしは小さいから花を探して旅をしないといけないの

その蝶は小さな蝶ネクタイをしていて

そのときもぐらはひらめいた

身につけて持ち運べば良いのだと

もぐらは花を首元に飾った

こころなしか

花も幸せそうにしている

ただいつの間にか

花をいつもつけているのははずかしく

また少し億劫になってきて

もぐらはまた花と相談したが

やはり花は一言も話さない

外へ出ると夜があり

夜こうもりが

お腹の袋に子供を入れて

空を遠くへ飛んでいくのが見えた

またもぐらはひらめいた

見えないところに隠すようにして

持ち運べばいいのだ

もぐらにはポケットなどなかったが

もぐらは知っていた

体の中には胃という袋がある

もぐらは花を食べた

食べてしまって

少しおかしなことをした気もしつつ

満足して

そのまま竪穴のすみかで

ごろりと横になって寝た

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?