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骨盤を矯正することは可能なのか?

整体院などの広告で、「骨盤矯正」という言葉を目にします。
骨盤とはご存知の通り「骨」ですが、骨盤の関節が動くというイメージはありません。
果たして骨盤を矯正することは可能なのでしょうか?
今回は骨盤矯正について、解剖学的に考えてみます。


骨盤の解剖学

骨盤は腸骨と仙骨、恥骨から構成されていて、それぞれの骨が関節として結合することで、骨盤を構成しています。
骨盤の関節には、仙腸関節と恥骨結合の2つの関節があります。
仙腸関節と恥骨結合は線維軟骨でできており、解剖学的には関節の動きはほとんどないとされています。
また、骨盤は主に6つの靭帯と、大殿筋などのお尻周りの筋肉による安定化機構がしっかりと働いています。

骨盤が歪む可能性

仙腸関節と恥骨結合は線維軟骨で強力に結合されており、通常はこれらの関節が動くことはほぼありません。
しかし、例外的に関節のズレが起こり、骨盤が歪むことがあります。
1つは、妊娠によるホルモンの影響です。出産時に胎児が胎道を通りやすくするために、リラキシンというホルモンが分泌され、仙腸関節や恥骨結合が動きやすくなります。

2つ目は、交通事故などで、非常に強い外力が骨盤に加わった場合です。この場合は骨盤の関節のズレだけでなく、高い確率で骨盤の骨折も伴います。
これらいずれかの原因によって骨盤が歪んでしまう可能性はありますが、それ以外の原因で骨盤が歪むことはほぼ考えられません。

骨盤の歪みを治すことは可能なのか?

妊娠によるホルモンの影響で骨盤の関節が緩くなってしまっても、出産後しばらくすれば、リラキシンの分泌も収まり、関節の結合は自然に元に戻ります。
また、交通事故などの非常に強い外力が加わらないとズレることがないような骨盤を、人の手の力で矯正するのは不可能だと思われます。
そのため、妊娠によるホルモンの影響や、病的なもの、あるいは交通事故などによる非常に強い外力が加わった場合に起こる骨盤の歪みは、人の手で矯正することは不可能と考えられます。そのような場合は病院を受診するようにしましょう。

骨盤の歪みとは?

骨盤の歪みを関節のズレではなく、骨盤のアライメントの異常ととらえると、骨盤を矯正することは可能になってきます。
骨盤が前傾(前に傾いた状態)することで腰椎(腰の骨)が反ってしまう、いわゆる「反り腰」や、骨盤を正面から見た時に、左右の高さに違いがある場合なども骨盤の歪みと捉えるなら、それらは矯正が可能です。
通常、骨盤は指2〜3横指程度前傾(前に傾いた状態)しています。分かりにくい表現ですみません。詳しく説明すると、骨盤の後方に上後腸骨棘と呼ばれる突起があり、そらが骨盤の前方にある上前腸骨棘よりも2〜3横指高い位置にあるのが正常な状態です。
上後腸骨棘の高さが上前腸骨棘よりも4横指以上高くなっていれば、骨盤が前傾して反り腰になっている可能性があります。
また、骨盤の左右の高さのズレが大きいと、歩様(歩いている姿)にも影響してきますので、客観的に評価することが可能です。

しっかりと身体を評価してくれるかどうかの見極めが大事

このような反り腰や骨盤の左右の高さに違いがある場合は、客観的に数値を用いて評価をし、何が原因で反り腰や骨盤の左右の高さの違いが生じているのかを見極め、原因に対するアプローチを行っていくことが重要です。
決して整体のように関節をボキボキ鳴らすだけで治ることはありません。
客観的な数値を用いて評価をすることで、治療の効果があったのかどうかを判断することができます。
数値を用いず、資格的な見た目だけで評価をしようとするような所は怪しいと思っていいでしょう。
関節をボキボキ鳴らしてもらうと、治療した気分にはなりますが、治療効果があったのかどうかは何も分かりません。
本当に信頼できる人なのか、原因や治療法について丁寧に説明してくれるのか、しっかりと見極めるようにしてください。

まとめ

今回、骨盤矯正について解剖学的な視点から、私の考えを書いてみました。
基本的に骨盤が歪むことはありません。仮に骨盤の関節が歪んでいたとしても、それを人の手で矯正するのは不可能です。
もし反り腰や骨盤の左右の傾きなどがある場合は、しっかりと客観的に評価をし、原因に対するアプローチを説明し、治療を行ってくれるような信頼できる人に相談するようにしてください。

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