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プロパラを振り返る(138)

 今日読んでいるのは、プロパラ61号(January-March 2013)。この号も内容豊富だが、まずはCaillaudと上田さんの作品を1作ずつ引用しよう。

(276)Michel Caillaud (Problem Paradise 61, 2013)

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           H#10 (13+8)

1.Rxg7 Bf1 2.Rg8+ Qg7+ 3.Rxg7 Rg2 4.Rg8+ Rg7 5.Rxg7 Rg2 6.Rg8+ Rg7 7.Rxg7 Bc4 8.bxc4 Sb3 9.c3 Sc5 10.c2 Sxd7#

 作者曰く'Humoristic' problem。本作は、世界大会で吉井氏の依頼に応じて一晩で(!)作ったものらしい。反復が生み出すリズムの心地よさをCaillaudが理解してくれているのが、元詰キストの一人として嬉しい。
 尚、本作のアイデアの元になったのが以下の作品。こちらも参考までに引用しておこう。

(276-a) Andriy Frolkin, Leonid Lyubashevsky
(Shakhmaty v SSSR 1987, Special Prize)

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           Release the position (9+12)

Retract : 1.Sf6-g8 Rg8xSg7! 2.Se8-g7 Rg7-g8+ 3.Sd7-f6 Rg8xBg7! (Rg8xQg7?) 4.Bd4-g7 Rg7-g8+ 5.Bc6-a4 Rg8xQg7! 6.Qe5-g7 Rg7-g8 + 7.Bg2-c6 Rg8xRg7! 8.Bf1-g2 Kg4-h4 9.g2xBh3+ …

 なくなった駒は白がQRRBSPPの7枚で、黒はQRBSの4枚。白の駒取りはe7,h3,h7のPによるもので尽きている。従ってa-b筋の白Pはいずれも直進途中で取られており、白は成駒を作っていない。即ち、取られた駒は全てオリジナルのものである。ということは、黒Kを解放するためには、白はBa4をf1に戻してからPg2xh3とするしかない。しかし黒はRg7以外に動かせる駒がないから、Rg7をg8に戻すときには必ずuncaptureしなくてはならない。そのことが分かれば、作意手順自体は容易に発見できるだろう。
 上手くできているのはQとBの限定の仕方だ。先にQを戻してしまうとQの移動先がe5しかなく(他はチェックをかけてしまいillegal)、Bを戻せなくなってしまう。最後、Bf1としてPh3の取りを戻せば、白Rh1はここから出ることなく取られたことになり、これで駒取りの収支も完全に合う。レトロ版AUWとでもいうべきか。

(277)上田吉一 (Problem Paradise 61, 2013)

277 上田吉一(PWC 41手)

           かしこ詰 41手
           PWC Type Ueda

PWC Type Ueda:敵陣に再生しても、その駒は成れないものとする。取られた駒が再生すると行き所のない駒になる場合、及び二歩を生じる場合は、そのまま持駒となる。

 47龍、イ46金、56龍、ロ54玉、
「65龍、45玉、A99角、55金、56龍、ハ44玉、55角(99金)、54玉」
「65龍、45玉、88角、55金、56龍、44玉、55角(88金)、54玉」
「65龍、45玉、77角、55金、56龍、44玉、55角(77金)、54玉」
 65龍、45玉、66角、ニ55銀、56龍、同と(57龍)、46龍(57金)、
 54玉、45龍、同桂(33龍)、44龍、同龍(34龍)、45龍(34桂)
 迄41手。

イ47同と(57龍)は、56龍、54玉、45龍以下収束に短絡。
イ55玉(45角)は、46龍、44玉、55龍迄。
ロ同と(57龍)は、46龍(57金)、54玉、45龍以下収束に短絡。
ハ54玉は45龍、同金引(46龍)、55龍迄。、
ニ他合は同龍迄。
A44角は55銀、56龍、同と(57龍)、46龍(57金)、54玉、
 45龍、同桂(33龍)以下逃れ。

 2手目の金捨合は、もし同龍なら47に復活した金で龍を取り返す意。趣向手順に入ってからの金合も、ほぼ同様の意味付けである(44玉に対し55龍なら、56に復活した金で龍を取れる)。しかし最後は金が売り切れてしまって44玉とできなくなり、収束する。金が出尽くした後の銀合も洒落ている(同龍だと65に銀が復活するので、セルフチェックの反則!)。
 

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