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プロパラを振り返る(59)

John Rice, Chess Problem Spectrum

 最後にご紹介するのは、FIDE ALBUMと同じく、feenchach誌とphenixの共同編集による、いわゆる“FEE=NIX”シリーズの第9冊目となる、John Rice氏の作品集です。
 John Rice氏はご存じの通り、プロブレム入門の名著として名高いChess Wizardry: The New ABC of Chess Problems (Batsford, 1996)の著者です。現在は、われわれプロブレミストたちの世界組織であるPCCCの会長として、プロブレム界を取り巻く難題の解決に当たっておられます。作品は、いかにも英国人らしいアイロニーとユーモアを基調とした、バランスの取れた作風です。

(M) John Rice (Variantim 1995, 1st Prize)

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           #2v (7+7)

 初形を眺めていると、役に立っていないQを動かすのがキーだと分かります。筋は、黒Rd3かBe5をQでピンしてやる手。そうすると、2.Se3/Sf4#がスレットになってくれます。それでは、正解はどっち?
 まず1.Qh5?(2.Sf4#)から試してみましょう。1...Rd4なら2.Se3#はすでに見たとおり。他にも1...Rxf3/Se6 2.Qxf3/Qxe5#という変化がありますが大丈夫。もう手はないか、と考えれば、1...Rc3!がありました。これは失敗です。
 そこでキーは1.Qd2!(2.Se3#)。変化は1...Bd4 2.Sf4#
 前述の紛れと、いわゆるpseudo le Grandのパターンになっています。
1...B--/Bc3/Sc5+/Re7+
2.Qxd3/Qa2/Rxc5/Sxe7#
 ロジックが明快で、作者の意図がわかりやすいのが美点でした。

(N) John Rice (Wola Gulowska 1999, 2nd HM)

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           #3 (10+5)

 今度は#3を。Rice氏の好きなテーマは、いわゆるhalf-batteryで、この作品ではそれが5段目にR+PPの形であります。そのどちらかを黒のQBが取ってくれて、さらにその駒がどこかに移動したら、もう片方のPでメイトにできる…という筋書きが見えてきます。そのためには、QBが移動するときにピンされるか、Pで取れる位置にきてもらう必要があります。
 以上のような筋書きを実現するのが1.Qa6!(2.Qc8+ Sd7 3.Qxd7#)です。変化は2通り。
1...Bxd5 2.Bb1+ Be4/Qe4 3.e6/Rf1#
1...Qxe5 2.Qd3+ Qe4/Be4 3.d6/Se3#
 どの変化でも、e4の地点で黒のQBが相互に干渉する仕掛けにご注目下さい。このメカニズムが本局の値打ちです。
 いわゆるside variationはまったくありませんが、この場合にはそれがテーマの表現をすっきりさせていて、かえって好感が持てます。詰将棋派にはアピールしやすい作品ではないでしょうか。
(平成25年4月3日記)

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