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L.Ceriani レトロプロブレム傑作選(8)

(8) Luigi Ceriani (32 personaggi e 1 autore 1955, 2nd Prize)

8 Luigi Ceriani (黒Qの初手は)

           黒Qの初手は? (12+15)

 なくなった駒は白がBBSSの4枚、黒はQのみ。このうち黒側の駒取りは全てPによるもの。特にPf2はh筋のPだったので、これが2枚駒取りをしてからPg2-g3として白Bf1が出て行っている。よってこのBが取られたのはb5である。また、2枚の黒Bを見ると、

(1)Pe7xd6としてBf8が外に出る
(2)これがa7に入ってからPb7-b6としてBc8が外に出る
(3)このBがh7に入ってからPg7-g6とする

という順でBとPが動いたことが分かる。
 だが、このまますぐに上記の逆算を試みると、白はh筋のPをh2まで下げるしかなく、そこで手詰まりになってしまう。よって、まず黒はRd2-d1, Rd1-c1と戻して、白Qが動けるようにしてやる必要がある。
 では、この順に戻してみよう。するとPd6を戻す前にKも戻す必要があるので、Pe7xd6の直前は例えば以下のような局面になっている筈だ。

Retract:1...Rd2-d1 2.Ph6-h7 Rd1-c1 3.Qc1-b1 Pg7-g6
4-7.Rb1-a1 Bc8-b7-e4-h7-g8 8.Ra2-a1 Pb7-b6
9-13.Ra1-a2 Bf8-e7-f6-d4-a7-b8
14-18.Ra2-a1 Ke8-e7-e6-e5-d4-e3

           (図1)

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 ここではたと気付く。Pd6を戻す前に、黒Kだけでなく黒Qも格納しなくてはならないのではないか?この黒Qをuncaptureできるのはa2しかないので、ここから19.Ra1xQa2 Qe6-a2…と戻してみよう。すると、以下のような局面が得られる。

19.Ra1xQa2 Qe6-a2 20.Ra2-a1 Qe7-e6 21.Ra1-b1 Qd8-e7 22.Qb1-c1 

           (図2)

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 ここからの逆算は22...Pe7xSd6 23.Se4-d6+ Rc1-d1 24.Sc3-e4が必然で、以下白Sをd1に挟み込んでSe1を外せば右下から黒Rを解放することができる筈だ。

                                       (図3)

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 だが、実際に24...Rd1-c1 25.Ph5-h6 Rc1-d1 26.Sd1-c3 Sg2-e1 27.Ph4-h5 Sf4-g2 28.Kg2-f1 Sd5-f4と戻してみると、h筋の白Pがh4迄降りてしまっているので、もはや黒Rは自陣に戻ることができない。図3において手を戻すのが白側だったら良いのだが…。

                                       (失敗図)

8-4(失敗図)


 こうなった原因は黒Qにある。つまり、図3においてもし黒Qがいなければ、24...Rd1-c1の代わりに24...Kd8-e8が可能であり、その後同様に進めh筋の白Pをh5でとどめておくことが可能になるのだ!従って、黒Qは初形位置で一歩も動くことなく取られていたことが示された。
 ちなみに、図3ではd1を巡って白と黒との間で相互干渉が起こっているが、こういう状態をretro-oppositionと呼ぶ(或いは「レトロにおいてtempoを失うことができない状態」と考えてもよいだろう)。この用語を用いると、本作では黒Qが初形位置で取られていることに対し、「もし初形位置で取られていないと、retro-oppositionに陥る」という意味付けを施していることになる。
 尚、作者Cerianiはその著書“32 personaggi e 1 autore”の中で、黒Qが初形位置で取られることについて実に12種類もの意味づけを考案している。

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