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温故知新(詰パラ317号)

 今日は詰パラ317号(昭和57年7月号)を読んでみよう。表紙をめくると、いきなり「メタ新世界」が特別出題されている。しかし、この昭和を代表する超大作を扱うにはこのブログは狭過ぎる(by Fermat)。ということで、図面だけ掲載してお茶を濁しておくことにしよう。

           山本昭一「メタ新世界」

(詰パラ 昭和57年7月号、 第21期看寿賞長編賞)

 そうそう、思い出した。昔々パラに入会したての頃、編集部に「『メタ新世界』という作品を教えて欲しい」と手紙を書いたら、柳原さんがこの結果稿のコピーを送ってくれたんだった。まだ長手数と言えば「寿」くらいしか知らない田舎の少年にとって理解するのは一苦労だったが、盤面に何度も並べてあれこれ調べたものだ。勿論超長手数を生み出すメカニズムにも感動したが、そのとき読んでいて一番印象に残ったのは、実は結果稿の最後の数行だった。

「とにもかくにも、奥園氏の記録にもこれで一応ピリオドが打たれたんだね。どうだい、その気分は?」
「いや、それを言うなら、新たなスタートラインが引かれたと言うべきだろう。これで終わった訳ではない」
「そうだね。だから詰将棋は素晴らしいんだ。その無限の可能性が」

 今改めて読んでも、この詰将棋に対する謙虚で真摯な姿勢には心打たれるものがある。

 学校を覗いてみると、角氏の実戦形が載っている。あれは確か角さんが看寿賞を受賞された年だったか、初めて全国大会でお会いしたのだが、その時に「最初から実戦形に並べて解いてみるんじゃない。狙いを持って作り始め、最後に形を整えると実戦形になるんだ」と仰っていたのが今でも印象に残っている。でもその創作法で、ここまで端正な実戦形が得られるんだろうか? 疑っている訳ではないのだが、何か不思議な気がする。

           角 建逸

(詰パラ 昭和57年7月号)

32飛、22香、同飛成、同玉、33と、同桂、同桂成、同玉、42飛成、23玉、
43龍、33飛、35桂、12玉、13香、21玉、31角成、同飛、23龍、22角、
11香成、同玉、13香、同角、同龍、21玉、12角、32玉、43龍、22玉、
42龍、32金、23桂成、11玉、31龍、同金、21飛、同金、同角成、同玉、
22金迄41手詰。

 大学院には、橋本孝治氏が初登場している。これも有名な作だが、引用しておこう。

           橋本孝治

(詰パラ 昭和57年7月号)

16銀、24玉、25銀上、13玉、14銀、24玉、25銀右、35玉、36龍、44玉、
45銀右、55玉、56龍、64玉、65銀右、75玉、76龍、84玉、85龍、同飛、
同銀、75玉、76銀左、66玉、67飛、55玉、56銀左、46玉、47飛、35玉、
36銀左、26玉、27飛、15玉、17飛、同角成、16歩、同馬、同銀、26玉、
27銀右、37玉、15角、26桂、同角、46玉、47銀右、57玉、46角、66玉、
67銀右、77玉、44角、55歩、同角引、86玉、98桂、96玉、97歩、同玉、
79角、98玉、87銀、89玉、78銀左、79玉、89金、68玉、77角、57玉、
58銀左、48玉、49香、39玉、66角、29玉、38銀左、28玉、29歩、同金、
同銀、27玉、28香、16玉、26金、17玉、27金迄87手詰。

ひたすら4枚の銀がバックする、なんとも珍妙な趣向作。「ミクロコスモス」の作者は、やはりデビュー作から既に異彩を放っていたのだ。
今日は看寿賞作家の揃い踏み。なんとも豪勢だねえ。

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