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温故知新(詰パラ303号-02)

 今日も303号の続き。高校とフェアリーランドから、それぞれ1作紹介しよう。

           森長宏明

(詰パラ 昭和56年5月号)

24桂、13玉、25桂、24玉、34金、25玉、35金、14玉、25金、13玉、
24金、同玉、25香、同玉、26香、同馬、34飛成迄17手詰。

 4手目の局面で桂が邪魔。それを消す為に金を打つと、すぐさまその金も邪魔駒になり、それを実に回りくどい方法で自力消去する。

 もう一つは、天竺煙の最高傑作。とにかくフェアリー嫌いの人も、騙されたと思って一度盤面に並べて鑑賞して貰いたい。

           左 真樹

天竺詰(詰パラ 昭和56年5月号、第8回前衛賞長編賞)

28と、同玉、17銀、19玉、28銀、同玉、33桂成、24歩、29香、同金、
同馬、37玉、28金、36玉、46と、同玉、37金打、45玉、55と、同玉、
46金打、54玉、64角成、同玉、55金打、63玉、73香成、同玉、72と、  同玉、82桂成、同玉、81と、同玉、73桂、同玉、64金、同玉、55金、   同玉、46金、同玉、37金、同玉、38香、同と、同銀、46玉、47歩、同と、
同銀、55玉、56歩、同と、同銀、64玉、65歩、同と、同銀、73玉、
74歩、同と、同銀、82玉、83銀成、同と、同馬、同玉、84歩、同玉、   85歩、同桂、同銀、同玉、97桂、同と、86歩、同玉、97と、76玉、   87と、66玉、77と、56玉、67と、46玉、57と、36玉、47と、26玉、   37と、25玉、26歩、同と、24銀成、同玉、34成桂、同玉、35歩、同玉、 26と、45玉、36と、55玉、46と、65玉、56と、75玉、66と、85玉、   76と、同玉、77歩、同玉、78歩、同玉、79香迄117手詰。

 斜め一往復、横一往復の追い趣向を楽しんでいるうちに盤面の駒が消えていくという、夢のような煙詰。実際に作ってみたことがある人は実感していると思うが、普通の詰将棋で煙詰を作るというのは全くのところ、盤駒を使って修行をしているようなものである。変化・紛れを割り切るのに苦心惨憺し、逆算が進んだ頃になって収束付近に余詰を発見したら、それまでの努力は水の泡。殆ど賽の河原で石を積むような作業なのだ。
 私は、たとえ天才左真樹氏といえどもこの図を得る為には上記のような試行錯誤を幾度となく繰り返したであろうことを堅く信じているが、作意順からはそのようなことを微塵も感じない。それは天竺というルールの特性であると同時に、やはり左真樹という作家の類稀なる資質に起因するのだろう。
 伝統ルールかどうか、そんなことはもはやどうでもいい。本作の圧倒的な美しさ、そして軽やかさ。それが全てだ。

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