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温故知新(詰パラ306号)

 今日は詰パラ306号(昭和56年8月号)を読んでみよう。この号は昭和55年度の七条賞と看寿賞の発表が載っている。七条賞は大西宏明氏、看寿賞は短編が橋本 樹、中編が添川公司、そして長編が橋本 哲の各氏となっている。解答王となった大西氏には、何と賞金5万円が送られたようだ。このとき大西氏はまだ15歳の高1である。凄いねえ!
 看寿賞受賞作のうち、橋本氏の長編は以前紹介したことがあるので、ここでは短編賞と中編賞を引用しておこう。

           橋本 樹

(近代将棋 昭和55年6月号、第55期塚田賞、第19期看寿賞)

56銀、同銀、67桂、同銀生、46銀、44玉、37銀、55玉、45飛、同玉、46龍迄11手詰。

 重く打ってすかさずさっと引く銀の動きは、まさに盲点。橋本氏らしからぬコンパクトな図で表現できたことで、評価が高まった。

           添川公司

(近代将棋 昭和55年3月号、第55期塚田賞、第19期看寿賞)

17角!62飛、83桂、81玉、91桂成、同玉、82角、81玉、71角成、同玉、
62角成、同玉、63飛、71玉、82龍、同玉、74桂、71玉、61飛成、同玉、
62金迄21手詰。

 添川氏の初期の代表作の一つ。本人も言っている様に若島氏の作品を下敷きにしているのでオリジナリティの点では若干割り引かれるが、それでもこれだけ見事に仕上げられると唸らざるを得ない。

 更に読み進めていくと、フェアリーランドに前衛賞作品を発見!

           荒井辰雄

バカ自殺詰 8手(詰パラ 昭和56年8月号、第8回前衛賞短編賞)

81飛、71角、22飛、同玉、29香、28飛、82飛成、同角迄8手詰。

 盤面たった3枚の簡素形であるが、詰上がりが想定できないと何処から手をつけてよいか分からず、無解は実に18名を数えた。良く見ると7手目が成生非限定だが、それは瑕疵に過ぎない。
 作者は荒井和之氏のお兄さん。本作により、初入選で第8回前衛賞短編賞を受賞されるという快挙を成し遂げた。

 もう一つ、デパートから大和氏の実戦形貧乏図式を。

           大和敏雄

(詰パラ 昭和56年8月号)

43飛成、22玉、13歩成、同香、24香、11玉、13龍、同桂、12香、同玉、 34馬、23歩、同香成、21玉、43馬、32桂、同成香、12玉、34馬、23飛、 24桂、11玉、44馬、同と、22角、同飛、12歩、同飛、同桂成、同玉、 22飛、11玉、21飛成迄33手詰。

 変則合を含む11手目からの応酬が非常に面白い。似た筋を井上徹也氏も手掛けられているが、この作あたりがオリジナルか。主題部分は似通っているが、大和作の合駒が23歩-32桂-23飛なのに対し、井上作は23桂-32歩-23金と変化しているのが興味深い。

          (参考図)井上徹也

(詰パラ 平成18年9月号)

43馬、12玉、34馬、23桂、同香成、21玉、43馬、32歩、同成香、12玉、 34馬、23金、24桂、11玉、44馬、同飛、22角、同金、12歩、同金、   同桂成、同玉、22金迄23手詰。

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